そのおんな悪妻につき

6/10
前へ
/10ページ
次へ
   ――夫婦に於いても不承不承の夜の営みは感情の圧殺である――    この言葉を考える。  本当だろうか?  感情の圧殺の根源は、冷めた夫婦関係の間隔の隙間に生まれるものではなかろうか。  性の不一致ではなく、人間と人間のすれ違い…。    愛人から連絡があった。  「一緒になってくれ」  妻とはもうやり直すことは万が一にもない。だから明日いつもの喫茶店で待っている。7時くらいなら、会社からも出られるし、そこから直帰ってことにするから、会ってくれないか。  わたしは、その電話を受けた時、心が躍り、もうすでにあげたミドリガメのエサを再度やり、こけしの頭を撫でた。  明らかにミドリガメは苦しそうになった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加