そのおんな悪妻につき

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 その夜、久しぶりに旦那の布団に入った。珍しく早い帰宅だったので、寝る時間には自宅でくつろいでいた。  寝ようと言い、ああ、と返ってくると、足から布団に入った。  「お前の足あったけーなー」  ―心があったかいのよ―  旦那は、明日にも居なくなる、わたしの熱い胸の内なども知らずに半年ぶりに愛し合った。良くその気になったものだ。  わたしは、これが最後の御奉公だと思いながら…。  ―いままで、なんか分からないけどわたしも悪いところがあったんじゃないかな。まあ、最後になるけど―  朝、ウキウキとミドリガメにエサをやり、こけしを撫でまわした。  わたしのお気に入りの鳴子こけし。  この鳴子こけしを買いに行った、旦那とのラブラブだった頃を思い出す。  「フッ」鼻孔から笑いのような鼻息が漏れる。  わたしは夕方からキャスター付きバッグに入れるだけのものを入れて、もう一度ミドリガメとこけしに別れを告げると。午後6時に家を出た。
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