そのおんな悪妻につき

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 もうすでに、愛人が喫茶店に来ていた。もうひとりの女性と共に―。  「やあ」愛人は浮かない顔をして手を挙げた。  その隣のロングの髪が似合うスポーティーな整った顔の美人に、愛人は肘でつつかれていた。  わたしが着席すると。  「これはオレの妻」と隣の女性を紹介した。  わたしは「お初にお目にかかります」場違いすぎる挨拶をしてしまった。  「あ、いや、こんにちは」言い直した。  愛人は切羽詰まった感じで「オレは妻と別れる」ただ、オレの妻は、今の会社の社長の娘さんなんだ、だからオレはもうこれ以上会社にはいられない。オレは岡山にある実家の宿を継ぐ。明日、朝の9時に新幹線で岡山まで一緒に行ってくれ。  「オレは待っている、これがチケットだ」  わたしは渡された切符を見た。
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