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真逆
咲希ちゃんの趣味
入学式の翌日以降、望実は毎日のよう咲希ちゃんといることが多かった。
学校が終わると商店街だけでなくカラオケやボーリング、いくつも連なる商店街を探検するように2人で巡っていた。
ある日2人でカフェに行くと咲希は望実にあることを問いかけた。
「咲希は望実ちゃん、いつも付き合わせてゴメンね。望実ちゃんの趣味や行きたい所があれば共有したいからよかったら教えてくれない?」
望実として答えに戸惑いなんて答えたらいいか分からなかった。それはこれといった趣味がなかったからだ。
「こんなことを言ったらホント?って思われるかも知れないけれど私ね、趣味という物がないの」
「咲希は少し間を置いてじゃあ休みの日は何をして過ごしているの?」
この質問に対してもなんと答えたらいいか悩んだ。理由としては休みの日にしていることはテレビを見てご飯を食べて寝るという日々でこれといったことをしていなかったからだ。
何か答えなきゃといけないと思いつつも名案が思い浮かばずにそのままテレビを見てご飯を食べて寝るっていう日々だよ。女子力の欠片もないし何の取り柄もないしどうしたらいいのかなって思うな。
「咲希は言葉を詰まらせつつ、そっか……ならばこれから作ればいいと思うよと笑顔で答えた」
「望実は趣味を咲希ちゃんの趣味でいいものがあれば参考にしたいと思い聞いてみた」
「咲希ちゃんの趣味って何?」
「趣味はね、アイドルやアニメ、マンガそしてスポーツ観戦(特に野球観戦)、音楽鑑賞、読書、カフェ巡りといった所かな。周りからは趣味が多いねって言われるけれどかなり偏っているよね」
「ホント趣味が豊富だね。アイドルが好きって言っていたけれど男性アイドルが好きなの?」
すると咲希はアイドルが好きって言うとみんな次にどの男性アイドルが好きなのって聞かれるけれど実はどちらかって言うと女性アイドルの方が好きなの。女の子が女の子を応援するってやっぱり変なのかな?
「望実はそんなことないよ、何も趣味もなく自堕落な時間を過ごしている私に比べたらよっぽどスゴいしどんな感じなのか気になる。ちなみに咲希ちゃんが好きなアイドルってなんてグループ?」
『沢山あるけれど特に好きなのは「ファイヤーフェアリーっていうアイドルかな」』
「望実は思わずキャッチーなアイドルグループだねと笑顔で答えた」
「咲希はそうなの。このグループの特徴としてはメンバーみんなが闘志漲る激しいダンスを踊っているにも関わらず途中にある的当てや輪投げで健気にやっている姿は同じ女の子でもかわいいって思わず言ってしまってね。女の子1人1人かわいくてその上に着ている衣装がまたかわいくてね。
あ、ずっと喋って望実ちゃんゴメンね」
「そんなことないよ。咲希ちゃんがホントにファイヤーフェアリーが好きっていうのが伝わってきたよ。咲希ちゃんが好きなメンバーと曲とかあるの?」
「望実ちゃん、よくぞ聞いてくれました。
咲希は特に好きなのは金成菜々美ちゃんの代名詞といえるファイヤーライズって曲かな
この曲はデビュー作で1番のダンスナンバーと呼び声高い程でその中でも菜々美ちゃんは1人だけ完璧なダンスから出る他を寄せ付けない圧倒的なオーラを放っていてこの子すごいなぁって思ってね。
かと思えば一旦ステージを離れると何もないところで躓いたり喋るの好きで自分から電話かけてきたのに他のメンバーと長時間電話して寝落ちしちゃうようなかわいらしい女の子でみんなからはフェアリーを超えて天使だねって言われている子でね」
「咲希、ホントにファイヤーフェアリーが好きだね」
「あ、望実ちゃんゴメン。咲希は自分の好きなことになると熱中しちゃってずっと喋って周りが見えなくなることがよくあってさ。もし前にも聞いたって話があれば言ってね。誰に言って誰に言ってないのか分からず1時間前に言ったことを忘れてまた言って友達にその話さっき聞いたって怒れる程だからさ」
「望実は思わずニコッと笑って咲希ちゃんかわいい。それだけ趣味に熱中しているっていいことだと思うし話したことすら忘れてまた言うって咲希ちゃんって意外と天然なのかもね」
「咲希はそんなこと思ったことないけどね」
「天然の人は自分で天然って言わないよ。分かっていてすることじゃないし素でやっているからこそ周りも和むし、かわいいって思うものだよ」
「そっか、望実ちゃんと出会ってそんなに経っていないのにこんな仲良くなれるとは思わなかった」
「こっちの台詞だよ。入学式で咲希ちゃんに声をかけてよかったなって思うしきっとこの事は一生語り続けていこうかなって思うよ。じゃあさ、仲良くなった証にお互いに名前で呼び合わない?」
『そうだね、そうしよう。
お互いのことを「望実」と「咲希」って呼び合うことになった』
中間テスト
「キーンコーンカーンコーン」
「望実はため息をしていた。明日からテストなのか、ヤダな……。とりあえず赤点取らないように頑張らないと」
「望実、暗い顔してどうしたの?何かあった?」
「何もないよ。ただ明日からテストで自信ないなって思っていただけで家に帰って勉強しておかないと赤点取ったらまた追試だなって思っていただけだよ」
「じゃあ一緒に図書館で勉強しようよ。1人でやるよりも2人で勉強した方がお互いに教え合えるからさ」
「咲希、ホントにいいの?全然勉強出来なくて人に教えていて自分の勉強が捗らないかも知れないけれど大丈夫なの?」
「勿論だよ。教うるは学ぶの半ば、人に何かを教えると言うことは半分は自分のためになるっていう言葉があるでしょ?それに望実に教えるには私自身が知っていなきゃいけないし教えることで復習にもなるからね」
「その言葉を聞いて萌恋は思わず涙が出てきた。
咲希……ありがとう、こんな私の為にここまでしてくれてホントにありがとう。神様、仏様、咲希様」
「望実、そんなこと言ってないで早く図書館行くよ」
2人で近くにある公立図書館に向かった。
早速望実は数学の教科書を開いて問題を解いていると分からない問題が出てきて優姫に尋ねた。
咲希、この問題ってどうやって解いたらいいの?
この問題は公式に当てはめてやれば解けるよ。1度同じ問題を解きつつ分かりやすく解説をしてくれた。
「えっ、スゴい分かりやすい。授業で先生が言っていた時は全然分からなかったのに今聞いただけで何となく解けるような気がする」
「そう言ってもらえると教えがいがあるよ。先生より分かりやすいって言うのはさすがに褒めすぎだよ、望実、そんなに褒めても何も出てこないからね」
閉館時間まで2人で勉強していたが案の定、私が咲希に聞いてばかりで逆に勉強の妨げをしてまったような気がして申し訳ない気持ちでいた。
「咲希、今日はありがとう。明日からのテスト頑張るね」
「こちらこそ望実に教えていて勉強になったよ」
翌日から3日間に渡りテストが始まった。
分からない問題もありつつも3日間のテスト期間、最最後の科目は数学が終わった。私は緊張の糸が切れたように脱力して机にへばりついていた。
「望実、テストお疲れ様。今からどこか行かない?」
「うん、いいよ。テスト終わったことだし羽根を伸ばして遠くまで行かない?咲希どうする?」
「そうだね……。望実の家に行きたい」
「えっ、望実の家?辞めた方がいいよ。家汚いしテレビに出てくるようなゴミ屋敷の様な家に咲希を上げる訳にはいかないよ」
「家の近所でゴミ屋敷の家を生で見ているから大丈夫だよ。ホントにゴミ屋敷ならば望実は普通に生活出来ないでしょ。だから心配しないで」
「そこまで言うのならばと望実は咲希を家に案内することにした」
最寄駅の鎌谷駅から20分、電車で橋を渡り神奈川に入り浦川駅を降りて近くを2人で歩いていると咲希は洋菓子屋を指を指してあそこに行こうと言われ、望実も久しぶりに行くことにした。
「洋菓子屋ラドール」
「咲希はお店の名前、佇まいめっちゃかわいいと燥いでいてその姿はまるで子供のような笑顔でスマホで写真を撮ってお店に入った。望実、ここのオススメの物って何?」
「基本的にとのケーキも美味しいけれど殆どのお客さんはシュークリームを買っていくかな。ここのシュークリームは外の皮は他の所に比べて美味しいし、クリームも沢山入っていて気をつけて食べないと逆側からクリームが出るから気をつけないといけないよ」
2人でシュークリームを買って望実の家に向かった。
ラドールから歩いて5分の所に私の家があり、ホントに咲希を家に上げるのかと後ろめたい気持ちもあるがシュークリームも買ったしここまで来たら後には引けない気持ちでいた。
咲希はお邪魔しますと家に上がった。
そしてひとまず望実の部屋に案内をした。
「咲希、スリッパ持ってくるからここで待っていて」
「望実は冷蔵庫にあったオレンジジュースを注いで咲希のもとに持って行った」
「望実、ありがとう。さっきゴミ屋敷なんて言っていたけれどステキな家だよ」
早速シュークリームを食べてお喋りをしていると1つ言いたいことがあるといった 。
「咲希は思わず前、趣味がなくてっていう話をしていたけれどこのシュークリームホントに美味しいし咲希が何がオススメって聞いたらどのケーキも美味しいけれど殆どのお客さんはシュークリームを買っていくって教えてくれたし気をつけるように食べてねってアドバイスしてくれたってことはきっと望実はスイーツ好きで趣味だと思うけどな」
「その時改めて自分がスイーツ好きなことを実感した。言われてみればたしかにそうかも。でもさ、女の子って甘いもの好きな子が多いでしょ。趣味というには違うかなって思っていた」
「気にしていないだけで望実にも趣味あったのかと気づかせてくれてありがとう」
「咲希は感謝されることじゃあないよ。よかったら今度、私の家に遊びに来てよ。今日はもう陽が暮れてきたからもう帰るね」
「じゃあ浦川駅まで送って行くね」と自分の中でも新たな発見を見つけた1日だった。
テスト返却
1週間後、全てのテストが返却されて掲示板には学年順位が貼りだされていた。
1位 川本咲希 600点
「咲希、全教科満点ってスゴい。この間図書館でテスト勉強していた時自分の勉強を全然していないのにも関わらず満点を取るなんて一体何者なのかと改めて思った」
「それで桐島望実の名前はどこだ?えっと……あ、あった」
50位 桐島望実 450点
自分の中では思っている以上に点数が取れていて期待以上の順位に赤点を免れたいいなと思っていた私がこの点数、この順位を取れたのは他でもない優姫のおかげでしかない、お礼に帰り何か奢ってあげよう。いやそれぐらいのことしないといけない使命感に駆られていた。
望実、順位どうだった?
「神様、仏様、咲希様のおかけで自分が思っていた以上の点数と順位が取れました。ホントにありがとうございます。帰りにご馳走様させてください」
「ちょっと望実、そんなに畏まらないでよ。じゃあ帰りにカフェ行こうよ。この近くに最近出来たカフェがあるみたいだからさ」
「じゃあ案内してもらおうかな。早く学校終わるの楽しみだな」
咲希はクスッと笑った。
「咲希どうしたの?何かあった?」
「いや、そんな事ないよ。望実ってホントにスイーツが好きってことが知れてよかった。それに早くカフェにって相当好きで咲希と行きたいと思ってくれることが嬉しくてさ。望実ってかわいいね」
色々と聞きたいことがあるけれどそれはカフェに行って話すことにするよ。
ホームルームが終わりを告げるチャイムが鳴ると私は一目散に咲希のもとに走っていった。
咲希、速く行かないとお店混んじゃうし並ぶことになるから速く行こうと伝えた。
望実、焦りすぎだよ。そんなに焦らなくても大丈夫だから。もうネットで予約したから安心して。
「そんなことまでしてくれたの?ありがとう。やる事早いね。勉強も出来て気が利いて咲希には欠点はないの?」
「周りがそう言ってくれるだけで自分ではそんなこと思わないよ。熱中しすぎて周りが見えなくなることだってよくあるし、この間だってファイヤーフェアリーの事をずっと話していたでしょ?」
「没頭出来る趣味があっていいと思うよ」
「望実、ありがとう。でも一方的に喋ってよくないと分かっていても好きなことになるとついつい喋りすぎることがあってそれが欠点かな。まぁそれよりもカフェに行こう」
望実は咲希は話を聞いて好きなことになると周りが見えなくなるってかわいい子だな、咲希とずっと居られたら幸せだろうなと感じていて学校を出た。
商店街を曲がって裏道にある隠れ家的な場所にあるお店に入った。
「咲希、何がオススメなの?」
「ネットではいちごミルクパフェがオススメって書いてあったからそれを頼もうかなって思うけれど望実はどうする?」
「せっかく食べるなら咲希とシェアしたいから他の物を食べようかな」
「そうだね……。パナナバフェにしようかな」
新しいお店とあって注文はタブレットで注文をした。
「望実、聞きたいことあるって言ってたけれど何だった?」
「今日掲示板に点数と順位が貼りだされていて咲希が満点で1位の事にも驚いたけれどそれ以上にテスト前日、図書館でずっと勉強教えてくれたのに何で満点取れるのかなって思ってさ」
「どうしてか……。また家に帰って勉強してたよ。望実、ちょっと何でもいいからノート見せてくれる?」
望実は言われるがままノートを渡した。
「咲希はノートを開いてすぐに閉じて望実、ちょっといい?厳しいことを言うけど」
「うん、何か指摘があれば言ってもらえれば」
「望実、このノートだけど蛍光ペンやカラフルにすることに重きを置いていてちゃんと復習とかしてる?これだけ見ると何かノートをかわいくしたいって見えてどうなのかなって思ってさ」
「その言葉を聞いて望実はギクッ、見透かされている。咲希の言う通りでノートをかわいくしたいってことしか考えていなかった。じゃあ咲希のノートを見せてもらえる?」
そして咲希のノートを見ると蛍光ペンも使っていないしシャーペンで書いてあり唯一女の子らしいと思うのは大事な所に星マークを付けているだけだ。
咲希は望実は忠告をした。
「言えることはとりあえずノートをかわいくすることよりも大事な所だけマーカーしたり星を付けたりした方がいいのかなっていうことかな」
しばらくして2人のもとにパフェが届いた。スマホで2ショットを撮り、パフェを撮って互いに食べあいこしていた。
「望実、よかったら今度咲希の家に遊びに来てと誘ってこの日は解散した」
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