春の訪れ

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春の訪れ

卒業式 冬が明けて桜が舞う季節になった。 望実と咲希はみんなと同じ女子校生としての生活を1年半、アイドル活動をして1年半と色々な経験か出来たなと実感した。アイドル活動で忙しい時はクラスメイトがノートを貸してくれたり、テスト期間は勉強を教えてくれたりと周りの人たちに支えられたな。 そして何よりも食いしん坊クインテットの杏奈、舞凛、里実はかけがえのない友達として学校でも私たちをアイドルとしてではなくいつも仲のいい友達として接してくれた。 桜の木を見て月日が経つのは早いな、もうこの制服を着て学校に来ることがないのかと考えると望実は寂しく目から涙が出てきた。 「ちょっと望実、泣いているけれどどうしたの?」 「声をかけてきたのは食いしん坊クインテットの1人の里実だった」 「望実、この桜を見てもうこの制服を着て学校に来ることがないのかとって思ったらなんだか寂しくなってきてね……」 「確かにそうだね。このかわいい制服に憧れて始めて学校の校門をくぐった時は緊張したし友達が出来るのかって不安でいっぱいだったよ。でも1年生の時の体育祭では急遽走ってもらってから仲良くなって気がつけば望実、咲希、杏菜、穂乃美の5人でいることが当たり前になってそれぞれの家に行って色々な所にみんなで行ったよね。そして望実と咲希はアイドルとして活動することになっても驕らず私たちのことを友達と接してくれてありがとう」 「望実、感謝しなきゃいけないのはこっちだよ。2人で涙を流していた」 すると今度は里実が声をかけてきた。 「2人とも何で泣いているの?」 「月日が経つのは早くて思い出を言っていたら泣けてきてね。私たちに何か用事あった?」 「用事があるも何も現役女子校生としてこの制服を着て写真撮れるのは最後だから食いしん坊クインテットで写真撮ろうって穂乃美が言っていたよ。望実も里実も涙を(ぬぐ)って早く行くよ」 校門の前で5人で並び桜の木をバックにスマホで写真を撮影してもらった。穂乃美は5人それぞれのスマホで撮ってもらう? 「咲希はそんなことしなくてもグループラインで写真を送ればいいよ。それなら女子校生の最後の日、みんなでどこか行こうよ」 「杏菜は私たちは勿論(もちろん)そうしたいけれど望実、咲希は時間あるの?この後仕事ないの?」 「望実は今日は休みもらっているよ。咲希は?」 「望実と一緒で今日は休みもらったから大丈夫だよ」 その後、鎌谷商店街でコロッケを食べてアミューズメント施設に向かい日が暮れるまでカラオケをしたり、ボーリングをしたりと遊んでいた。 杏菜は2人ともアイドルで忙しいけれど体調には気をつけて何かあったらいつでも私たちに相談してね。アイドルの裏事情は分からないけれど話を聞くだけでも楽になると思うからさ。 望実は杏菜、優しい言葉をありがとう。 この時に友達は一生ものだと感じた。 新戦力 オーディションの合格が決まった翌日、現役メンバーはレッスン場に全員呼び出された。 運営スタッフさんから新たに2人のメンバーが加わることになります。2人とも挨拶して。 まずは栗原から。 「初めまして栗原海音(くりはらみのん)と言います。まだまだ未熟者ですが精一杯アイドルとして頑張ります」 次に名取、挨拶して。 「初めまして名取萌々香と言います。まだアイドルになって右も左も知らない状況ですが先輩たちの姿を見てメンバーやスタッフさん、そしてファンの人に心から応援してもらえるようなアイドルになります。萌々香は誰にも負けるつもりはありません」 その言葉を聞いて望実はアイドルとして、キャプテンとして頼もしいメンバーが加入したなと感じた。 では現キャプテンの桐島望実から一言。 「改めまして、ストロベリーカーニバルの桐島望実です。まずは海音ちゃん、萌々香ちゃん合格おめでとうございます。新たなメンバーも加わり望実は1度フラットに考えたいと思います。研究生、正規メンバーの肩書きは関係ないです。シングルやアルバムのメンバー、そしてライブやコンサートの大小関係なく実力で決めます。それはキャプテンの私もそうです。そのステージに見合う実力がないのならステージには立ちません。なので今一度みんなで切磋琢磨していきましょう」 望実は自分の戒めをする意味でも挨拶で述べた。ストロベリーカーニバルのキャプテン、桐島望実として雑誌の取材やテレビ、ラジオ出演が増えたことはグループを知ってもらうことは大事だがホームグラウンドはあくまでも劇場ライブに来てくれるファンの人やコンサートに来てくれるお客さん。そこを疎かにしてライブに出るのは他のメンバーにもファンの人にも失礼。他人に言っておいて自分が出来ていなかったら話にならない。 次なるメンバー 望実は咲希に電話をかけた。 「もしもし咲希、望実だけど今大丈夫?」 「うん、大丈夫だけど望実から電話ってどうしたの?」 「今のストロベリーカーニバルについて咲希はどう思う?」 「どう思うか……。咲希や望実が少しずつだけど外で仕事をさせてもらっているから前に比べたら知名度が上がって劇場ライブやコンサートでも倍率あがってそれだけ私たちに興味を持ってくれていると思う一方、いい意味でも悪い意味でも現状維持でいいかなっていう雰囲気を感じるよ。望実は?」 「さすが咲希、望実も一緒でこのままだとストロベリーカーニバルは桐島望実、川本咲希のグループになるような気がしてね。仮に私たちがいなくなったらどうなるのかなって……」 「もしかして望実、卒業をしようと考えている?」 「早かれ遅かれ望実も咲希もずっとアイドルというわけにはいかないからね。望実や咲希が卒業してもグループを卒業しても安心して卒業しても大丈夫だと思えるようにして卒業しないとダメかなって。さっきも言ったけれど桐島望実、川本咲希の2人だけじゃあダメだと思ってさ」 「望実はキャプテンとしてちゃんとグループの事を見ているね。萌恋も分かっていると思うけれど私たちが期待するメンバーに贔屓するのは違うと思う。当時研修生だった望実いつもレッスン終わってから残って皆実さんに聞きに行っていた様な姿勢じゃないとダメじゃないかな。 あの時の望実は先に正規メンバーになった咲希に追いつき追い越したい。ずっとこのままではアイドル人生として終わる。だから皆実に声をかけてたな」 「前に舞凛が言っていたように私たちはアイドル、身体が資本だからお互いに体調には気をつけないとね。明日も早いし電話切るね」 翌日、望実は劇場に向かった。いつもレッスン前に来て練習に臨むがこの日は違った。足音が聞こえ、誰か練習していると思った。 着替えてレッスン場に行くと行くと海音と萌々香が来て練習をしていた。望実に気づいた2人は萌恋さんおはようございます。 望実は2人にまだレッスン始まるまで1時間もあるのに早く来て練習するって偉いね。昨日の復習? 「海音はそうです。全然踊れていなくて萌々香にいちから教えてもらっていました。歌も上手くない、ダンスも上手くないってなったら早く来て少しでも萌々香や先輩たちに追いつかないと1人だけ出来ない人がいるせいで遅れたら迷惑をかけてしまうので」 「海音ちゃんの気持ち分かるよ。望実もよくレッスン後に残って練習していたからさ。でも早く来て練習するメンバーは始めてみたよ。望実も練習するから海音ちゃん、萌々香ちゃん一緒に練習しよう」 「萌々香はそれだと望実さんに迷惑じゃあ……。 人間は1人で出来ることは限られているよ。分からないところあったら言ってね。望実も復習になるし、それに1回や2回踊っただけで完璧に踊るなんて私にもムリ。だから練習するって感じだよ。今からは鏡を見て一緒にやるからそのポイントで言ってね」 望実は身振り手振り教えているとレッスン5分前になり1度自主練を切り上げた。3人でタオルで汗を拭いて水を飲んで少しゆっくりしていた。 レッスンが始まり望実は鏡越しで海音ちゃんと萌々香ちゃんの様子を見ていた。入りたてでまだまだ荒削りで踊ることに必死だが他のメンバーと違った。どうしたらもっと上手く踊れるのか?私たちが先輩たちの足を引っ張ってはいけないとひしひしと感じた。 その姿を見て私はこの2人をまず1人前にしていずれは望実と咲希、食いしん坊姉妹を超える存在になって欲しいと願っていた。それはあくまでも望実の思いであってそれを実行するのは海音ちゃんと萌々香ちゃんだけどきっとやってくれる。 今日の復習をした事を復習するためにも全員が出た後に練習しようと思っていた。すると海音と萌々香は望実のもとにやって来た。 「望実さん、お時間があればダンスを教えてもらえませんか?」 お願い致しますと頭を下げた。 「望実も今日の復習しようとしようとしていたから一緒にやろう」 朝から晩まで練習しよつって思うのは偉いね。他のメンバーは終わるなりすぐに帰ってどうなのかなって思うけどね。 「海音は先輩方はダンス踊れているし後ろから見てもキレが違うなと実感しています。萌々香はどう思う?」 「萌々香は望実さんに憧れてストロベリーカーニバルのオーディション受けて入ってみるとあんなに仕事があって忙しいのにも関わらずダンスも完璧で背中で気持ちを伝えているように感じてあの萌恋さんでもここまでやるのなら自分はもっとやらないとっていう気持ちだよ」 「まだまだ若輩者ですが宜しくお願い致します」 「来るもの拒まず去るもの追わずが望実の信念だからいつでも来てね。3人でこの日行ったレッスンを復習しつつ時計を見ると午後6時、あまり遅くなっては親御さんも心配すると考えて2人に帰るように伝えた」 そんなある日、咲希からある事を聞いた。 「望実、海音ちゃんと萌々香ちゃんが誰かに嫌がらせを受けているってウワサ聞いたよ。望実も実際に見たわけじゃないからデマかも知れないけれどキャプテンでもある萌恋に一様伝えておいた方がいいと」 「咲希、伝えてくれてありがとう。それがもしホントで誰かが2人に嫌がらせをしているならそのメンバーを許しておけない。ちゃんと注意するね」 このグループでそんなことがおきるのかな。仮にそうならばキャプテンの望実にも責任がある。ウワサじゃなくてホントならまたおきる。現行犯でそのメンバーに注意するしなきゃいけない。 望実は疑いたくないものの海音ちゃんと萌々香ちゃんが誰かに何かされていないのか注視していた。練習後に家から持って来た飲み物が無くなりレッスン場を出て劇場近くの自販機で緑茶を買いに行った。その帰りある光景を見た。 「海音、萌々香、最近だけど望実に朝や帰りにマンツーマンで教えてもらってキャプテンに媚び売って好かれたいの?それってどうなの?」 望実は影に隠れてしばらく4人の会話を聞いていた。 「海音はそんなつもりないです。海音は先輩たちの足を引っ張らないように練習していたら望実さんが教えてあげるって言ってくださって。ねぇ萌々香」 「正直私たちは先輩たちの足元にも及びません、なので自主練して少しでも追いつこうと練習していました。それが媚び売っていることになりますか?」 「研究生が生意気言うな。練習なら家ですればいいでしょ?わざわざレッスン場でする必要あるの?」 それは……。 咲希が言っていたウワサはホントだったのか。なんだか寂しい思いもありつつこのままでは収拾がつかないと仲裁に入ることにした。 「ちょっとそこの4人、話があるからこっち来て。海音ちゃん、萌々香ちゃん2人に何を言われたの?」 「朝や帰りにマンツーマンで教えてもらってキャプテンに媚び売って好かれたいのって言われました。私たちは決してそんなつもりはないのですか中々聞いてもらえずで……」 「あなたたちどういうつもりで海音ちゃんと萌々香ちゃんにそんなこと言ったのかいってみな、状況によっては怒るだけじゃあ済まさないよ」 「何でって研究生の立場で望実に近づいて媚びを売って仲良くなって贔屓(ひいき)してもらおうと目論(もくろ)むのはおかしいでしょって話だよ」 「望実は2人が加入した時に改めて言ったよね?現役メンバーも研究生といった肩書き関係ない。そんないちゃもん言う時間があったら少しでも練習したらどうなの?それよりも自分たちレッスン終わったら誰よりも早く帰っているけれど練習しているの?」 「そんなの望実に言われなくても練習しているよ。それを言い出したら望実の仲良くしている咲希だって帰っているから私たちと変わらないでしょ?どうして私たちだけ言われなきゃいけないわけ?」 「どうしてって望実やスタッフさんが話している時聞いているのか聞いてないのか知らないけれどずっと2人で喋っているけれどどうなのかなって思うわ。それに比べて海音ちゃんと萌々香ちゃんは踊れないからって言って朝早く来て望実に教えてくださいって頭を下げてお願いしてくれた研究生と人の話をしている時にベラベラ喋る人とえらい違いだね。ハッキリ言わせてもらうけれどなんでアイドルしているの?」 「それは歌って踊ってキラキラ輝くためでしょ。 じゃあ今の自分たちはアイドルとしてどうだと思う?まず人のこととやかく言う前にそこを考えな」 「望実と咲希は劇場ライブ以外にも仕事あるからそんな偉そうなこと言えるわけでしょ?望実や咲希は忙しい中練習しているの?私たちには思えないね」 「そっか。それを答える前にまず2人に謝りな。そうしたら望実も答えるし咲希を呼んで聞くよ。早く」 「海音、萌々香意地悪してゴメンね」 「望実はどんなに他の仕事忙しくたってアイドルである以上劇場ライブやコンサートで踊る曲を覚えるのは当然、ファンの人に観てもらう以上最高のものを見せるために誰よりも早く来て練習して誰よりも遅くまで練習しているよ。咲希を呼んでくるからここでちょっと待っていて。申し訳ないけど咲希、ちょっとこっち来てもらっていい?」 「ん?望実どうしたの?スゴい剣幕だけど……」 「咲希は仕事忙しくても家で自主練している?」 「うん、しているよ、家に室内カメラあって映像送ってもらうね。すぐに映像が送られてきた。これが咲希が家で踊っている映像だよ。論より証拠かなと」 「2度とこんなことしないって誓って。そしたらアイドルとして活路を見出すヒントにあげるよ」 「私たちは2度とこんなマネは致しません。キャプテン、アイドルとしてのヒント教えてください」 「歌唱力やダンスだけじゃなくて自分だけの趣味を貫くこと、もっと発信していくことかな」 みんな陽が落ちてきたからもう帰るように。 望実は咲希、海音、萌々香の4人でファミレスに向かった。 海音はチーズハンバーグ、萌々香はたらこパスタ、咲希はカルボナーラ、望実はデミグラスハンバーグを注文した。 「海音ちゃん、萌々香ちゃん今日は先輩たちに嫌がらせを受ける事になったのはキャプテンでもある望実のせいでもある。ホントゴメンなさい」 「海音は望実さんが謝らないでください。むしろ私たちを助けて下さりありがとうございます」 「萌々香はそうですよ、海音の言うとおり望実さんは私たちをかばってくださったじゃないですか。望実さんが忙しい中どれだけ苦労されているか萌々香が1番知っています。なのであんな事言うなんて失礼だなと思います。自分の事を言われた以上に悔しいです」 「咲希は望実があんな剣幕なの初めて見た。でもなんだかんだでメンバーにアドバイスするあたりはやっぱり望実は優しいね」 「望実はメンバーが悪いことがあったら注意するし、メンバーが困ったらアドバイスするのがキャプテンとしての役目だよ。ただそれを全うしただけ」 4人の絆が深まったなと感じてファミレスを出た。
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