街中の城

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街中の城

別世界 ある日、咲希が声をかけてきた。 「望実、よかったら今日咲希の家に来ない?」 「望実はうん、いいよ。楽しみにしているよ」 そう答え授業を受けていた。 ホームルームを終えて私と咲希は校門を出て鎌谷駅に歩いて行った。 「咲希、鎌谷駅からは遠いの?」 「ここから20分くらいだから近くも遠くもないかな。途中、乗り換えしないといけないから乗り継ぎ次第ではもう少しかかるかもしれないかな」 「望実は全教科満点、絵に書いたような才色兼備の咲希がどんな家に住んでいるのか非常に楽しみにしていた。 家では箱入り娘のように昔から大事に育てられてきたのか? はたまた自由奔放に育ってきたのか? どちらにしてもどうしたらこんないい子になるのか?同級生として友達としてとても気になる。 そんなことを思いつつ望実は鎌谷駅に入ってきた電車に乗った。 鎌谷駅から急行で4駅進み1度、雀谷(すずめたに)駅で降りて地下鉄に乗り換える。そこから6駅進み錦城駅で降りた。 地上に上がるとすぐにタワーマンションや商業施設が立ち並んでおり望実は同じ日本なのか?ここは異国の地なのか頭がごちゃごちゃになっていた。 「望実、ここから少しあるから案内するね」 言われるがまま咲希について行った。 歩いて行くと右を見ても左を見ても豪邸の数々、望実は一体これからどこへ連れて行かれるのか。ふとあることを思い出した。 前にテレビで東京の錦城(きんじょう)地区の地価が高騰している。ということは私は今、錦城を歩いているのかと思っていた。 咲希は足を止めると望実は驚いた。 他の豪邸とは比べものにならないほど大きくてここは城なのか。ホントに咲希はこんなスゴい家に住んでいるのか、この家とは真逆といえるような庶民的な家に住んでいるような私と仲良くしてくれているのかますます状況が分からなくなり口をポカンと開けて固まっていた。 「望実、口をポカンと開けてどうしたの?家に入るよ。カードキーを差し込むと閉じていた門が開いた」 2人で門の中を入り家に向かうとさらに門があり、今度は一般的な鍵で開けてやっと家に入れるような感じになっており、2人で家に入った。 ここまでだけでもスゴいセキュリティーということはきっと中はとんでもないことに違いない、いや表向きはスゴいのに家に入った。望実は普通の部屋、なんてことはありえずはずがない。 家を汚さないと望実は靴を脱ごうとした。 咲希は望実、靴は脱がなくていいよ。土足で歩いてもらって大丈夫だよ。 「思わず咲希、ここは海外じゃなくて日本だよ?ホントにいいの?家が(よご)れちゃうよ。せめてスリッパか何か履かないと落ち着かないよ」 「うん大丈夫だよ。もし汚れが気になるようならある人を呼ぶからちょっと待っていて。 ちょっと佐藤。玄関のまで来てと内線で呼んだ」 どういうこと?内線で佐藤って人を呼ぶ?この家は一体どうなっているんだと思っていた。 しばらくすると初老を過ぎた男性が来た。 「執事の佐藤です。咲希さん、どうされましたか?」 「友達の望実ちゃんが土足で歩くの悪いと思うみたいだからスリッパ持ってきてあげて。後、望実ちゃんの靴が汚れないようにしておいて」 「執事の佐藤です。咲希さんに言われた通りスリッパをお持ち致しました。大事なお靴の方をお預かり致します。 では客間の方でお待ちください。飲み物と果物を用意しますので優姫さん、また内線で何にされるかお電話ください」 望実は靴からスリッパに履き替えて客間に向かって歩いていると美術の教科書に載っている絵画だったりテレビでいくらで落札されたというニュースの名画がズラリと並んでいて私は間違って触れて傷をつけたり骨董品(こっとうひん)等を割らないように気をつけないと。 「客間に座り、望実は咲希に尋ねた」 「咲希、どうしてこんなに仲良くしてくれるの?前に望実の家に来た時に近くにゴミ屋敷の家があったって言ってたけれどそれって望実に気を遣ってくれていたの?こんな高級住宅街にゴミ屋敷なんてありえないと思うよ」 「どうして望実と仲良くしていたかって言うとね、この家に住んでいるからか小学生や中学生の時にお嬢様とか令嬢だって揶揄(からか)われてさ。でもその中でも普通に接してくれる仲のいい子たちとだけ家に入れたり遊びに行き来したりしてたって感じ。だから望実と仲良くして欲しいな」 「うん、勿論(もちろん)だよ」 「後、前にこの辺りにゴミ屋敷があったっていうのもホントだよ。この家の斜め向かえにある家、今は立派な家が建っているけれど数年前は道いっぱいにゴミが溢れていてそこに住んでいる人が財産だって言う一方で全然立ち退かなかったから行政代執行することになってからあの家が建つことになったよ」 「ぐぅ〜」 「望実、お腹空いた?何か果物でも食べようか。何にする?マンゴーやメロン、ドリアン等色々あるよ」 「咲希、ドリアンってあの果物の王様って呼ばれているあのドリアン?開けると臭いけれど食べたら美味しいあれだよね?じゃあ滅多に食べる機会もないと思うからドリアンにしようかな」 「咲希は内線で佐藤にドリアン2つにミルクティーを頼んだ」 「客間にお持ちしますのでしばらくお待ちくださいと内線が切れた」 「望実、ちょっと待っていてね。今、執事の佐藤に持ってきてもらうようにお願いしたからそれまでしばらく喋っていようか」 咲希に聞きたいことがあると伝えた」 「いいよ、何でも聞いて。でも大概みんな似たようなことを聞くことを多いから質問問答みたいなのが出来ている感じだけどねと笑っていた」 「咲希の気持ちを汲み、質問をする前にもし答えたくないこととかあったら遠慮なくそれは答えたくないって言ってもらって構わないからねと先に伝えた」 「そういう風に言ってくれる友達、望実が始めてだよ。何でも答えるからどんどん聞いて 」 「まず1つにこれだけ大きい家に住んでいるってことは毎日ご飯はフランス料理や割烹(かっぽう)料理といったのがステータスなの?」 「この家を見たらそう思われがちで実際に小学校の頃は毎日フランス料理ってこともよくあってそれが原因でイジメられることになって中学生になってからはそういうのはたまに食べるだけで普段はご飯に味噌汁、生姜焼きや焼魚を食べる生活だよ。意外でしょ?」 「咲希、イヤな記憶を思い出させるようなことしてゴメンね」 「望実は優しいね。今では気にしていないから大丈夫だから何でも聞いて」 「2つ目にどうして咲希はそんな謙虚なの?」 「自分で謙虚かどうかは分からないけれどきっとこの家に住んでいるからそう思うかもね。でもこの家に住めているのはパパが家電量販店の社長、ママがアパレル店の社長で2人とも自分で立ち上げて1代で築き上げてきた感じで咲希はこうやっていい暮らしをさせてもらっている。それで私が令嬢だからって(さげす)むような態度を取っていたり偉そうな態度をとっていたら望実はどう思う?」 「えっ、何この子。偉そうな態度とって親のおかげじゃないの?って思うかな」 「でしょ?そういう事だよ。だから豪邸に住む子も普通の家に住んでいる子も平等に接しようって思ったからかな」 「3つ目にこんな広い家でどこで勉強しているの?」 「トントン、咲希さんお持ちしました」 「ドリアンとミルクティーをお持ちしました」 「望実、先にドリアンを食べよう、今の質問はこれが食べ終わってから案内するね」 「咲希、ドリアンってフルーツの王様の!?」 「そうだよ。望実、ドリアン苦手?」 「苦手も何もドリアンを見る日が来るとは思わなかったよ」 「望実は生まれて初めて、いやこれで最後になるかもしれないドリアンを噛み締めたべさせてもらいます」 「モグモグ」 ドリアンって匂いがスゴいって聞いていたけれど食べてみるとほんのり甘くてクリーミーだね!咲希、いつもドリアン食べているの? 毎日ドリアン食べてたら飽きるよ。さすがに。 「咲希、次はどこに連れて行ってくれるの?」 私たちはドリアンを食べ終わると咲希はじゃあ案内するねと客間を出た。 望実は歩いていていたる所に内線があって咲希に尋ねた。 「ねぇ、咲希どうしてこんなに内線があるの?やっぱり部屋が広いから?」 「部屋が広くて沢山あるっていうのもあるけれど小さい頃に咲希が家で迷子になっちゃって探すのが大変で色んな人が半日がかりで探してくれてね。それから全部屋に内線を取り付けるようにしてそれぞれ番号を振ってやりとりすれば早いからね」 「部屋に内線があってその事を淡々と喋る咲希、すごいなぁと思っていた」 そして咲希は足を止め、ここで勉強しているよ。 ここは一体なんだ?図書館なのか?沢山の本がズラリと並んでおりその規模は学校の図書室の比ではない。市立図書館と同規模で望実はただただ見上げて固まっていた。何もかもがスゴい、この家にいるのは夢なのか?現実なのか分からなくなってきた。 そうだ、望実せっかくなら私の趣味の部屋に見ていってよ。ファイヤーフェアリーのグッズも沢山あるからさ。 望実はもう何が出てきても驚かないと思い、咲希と一緒に歩いて行った。 まずここがアイドル部屋でファイヤーフェアリーのグッズは主にここに置いていて、隣の部屋はアニメグッズとスポーツ関連グッズが置いてあった。 じゃあ咲希の寝ている部屋ある所には案内するね。 そこにはクマのぬいぐるみが所狭しと並んでいて女子力の高さを目の当たりにして言葉が出なかった。 口には出さなかったが普通、自分専用の部屋がいくつもあるのって異次元としか言えないな。 「ねぇ望実、動物って好き?」 「うん、好きだよ。特に犬が好きかな」 「じゃあ付いてきて犬を飼っているからさ」 再び廊下を歩いて別の部屋に案内された。 咲希がドアを開けるとゴールデンレトリバーは望実に飛び込み顔をペロペロしていてスゴい人懐っこい子だなと思っていた。 「咲希、この子の名前って何て言うの?」 「すぐにペロペロしちゃうからペロちゃんって呼んでいるよ。かわいいでしょ?」 「うん、ペロちゃんかわいいね。シッポ振ってペロペロしているからまるで自分のこと子犬かのように思っているのかと思うと余計に愛おしく思えるよ」 「さすが望実、目の付け所がいいね。遊びに来てくれた人はみんな口を揃えてそういうよ」 ペロちゃんにはね、ある芸が出来るよ。ペロちゃんお座り。望実にご挨拶して。 するとペロちゃんは座って頭をペコって下げている姿があまりにもかわいく望実はペロちゃんの頭を撫でた。 「ホント人懐っこくてかわいいね、一緒に写真撮りたいから咲希、望実のスマホで写真撮って」 1枚写真を撮ってもらい、時間を見ると午後6時で外を見ると大雨が降っていた。望実は咲希についつい長居しちゃてゴメンね、コンビニでビニール傘買って帰るね。 「望実、こんな大雨の中帰るつもり?せっかくならは晩御飯食べていきなよ。勿論(もちろん)帰りは執事の佐藤に送らせるようにするから気にしないで」 「じゃあ……お言葉に甘えてご馳走になろうかな」 「望実、何が食べたい?中華料理から割烹料理やフランス料理等色々あるけれどどうする?」 「どうするってどういうこと?」 「咲希は大きいキッチンが1つあるだけでいくつも作れないからそれぞれに専属の料理人がいて今日はフランス料理食べたいから来てもらうシステムなの」 「じゃあその時に食べたいものによって指名するってこと?」 「まぁ簡単に言えばそういうことだね。だから望実に何が食べたいか聞いたって感じ」 「そうだね……。雨も降って温まりたいから中華料理にしようかな」 「うん、分かった。内線で佐藤に伝えるね。もしもし佐藤、今日は望実ちゃんが晩御飯食べるみたいだから中華料理の人呼んでおいてね」 「咲希さん、かしこまりました。雨も酷いので望実さんが帰られる際は車で送らせてもらいます」 望実はママに友達の家でご飯を食べていくことを伝えたがあまりにもスゴすぎてこの状況は言っても信じてもらえないだろうと思っていた。 「望実、待っている間暇だと思うから勉強部屋で本でも読んで時間潰す?」 「じゃあそうだね。望実からしたら勉強部屋じゃなくて図書館だと思うけどね。2人で宿題をして空いた時間に読書をして待っていた」 1時間後、「プルル、プルル咲希さんお食事のご用意が出来ました。客間にお越しください」 「望実、ご飯出来たみたいだから客間に行こうか」 果たしてどんな中華料理が出てくるのか楽しみでワクワクして廊下を歩いた。 客間に行くとからあげ、エビマヨ、天津飯、ふかひれスープとどれも美味しそうな物が並べられていた。実際に食べるとどれも美味しく、ふかひれスープは生まれて初めてで感動のあまり涙が出てきた。 「佐藤さん、すみません料理人の方を呼んでもらえますか?」 望実さん、(かしこ)まりましたと料理人を呼んだ。 「本日担当致しました中華料理の本田です。お口に合わなかったでしょうか?」 「望実はお口に合わないなんてとんでもないです。どれも美味しくてふかひれスープを口にしたのが初めてで涙が出るくらい、美味しくて是非ともお礼を言いたくてお呼びしました」 「そう言ってもらえると作っているのもとしては嬉しい限りです。また優姫さんの家に遊びに来られた際はまた中華料理を選んで頂ければ幸いです」 そんな感じで時刻は午後8時になろうとしていた。 「咲希、じゃあ望実はそろそろ帰るね」 「ちょっと待って、まだ雨も酷いし佐藤に送らせるから」 「さすがに何から何までさせるのは申し訳ないよ」 「プルルプルル、咲希さん車の用意が出来ましたので表に来てください」 「望実、もう佐藤が表で待っているから早く行こう」 家を出ると佐藤さんはリムジンに乗っていて私と咲希は乗り込んだ。 「望実は佐藤さんに神奈川県にあるラドールっていう洋菓子屋にお願いします」 佐藤はカーナビでセットして車を走り出した。 道中で私は咲希に何もかもがスゴくて驚いたとずっと話しているとあっという間にラドールに着いた。 じゃあ望実、また明日ね。いつでも遊びに来てね。 うん、分かった。とは言ったものの未だに今日の出来事が夢なのか現実なのか分からなかった。 家に着いて咲希にラインで今日は家に遊びに行かせてくれてありがとう。執事の佐藤さんや料理人の本田さんにもありがとうございますって伝えておいてね。 咲希から返信が来て2人に伝えておくね。よかったらまた遊びに来てね。また望実の家にも遊びに行きたいな。 望実は思わずあんな家でよければいつでもいいよと返信し、ゴールデンレトリバーのペロちゃんの部屋より小さいこの家って一体どうなのか。驚きしかなかった1日だった。
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