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咲希ちゃんの家に
家族総出
咲希を見送った後、望実は馴れ初めが何でどうやって仲良くなったのか根掘り葉掘り聞かれた。
「その話を聞いたバパも是非とも行きたい、ダメ元でもいいからパパも行ってもいいかと言い出した。聞くだけ聞くけどダメだったらゴメンねと伝えた」
咲希のことだからきっといいと言ってくれるだろうけど人の家に家族総出で押しかけるのは果たしてどうなのか、優姫に申し訳ない気持ちでいた。
翌日、教室に入って来た咲希を呼んだ。
「ちょっと咲希、話があるからちょっと来て」
うん、分かったと荷物を置いて望実の所へやって来た。
「昨日咲希が望実の家に来てくれたでしょ?その話を聞いてママだけでなくバパも行きたいってしつこくて。人の家に家族総出で押しかけるのは申し訳とは思うけれど私とママ、パパの3人でお邪魔してもいいかな?」
「そういう事ね。咲希は2人でも3人でも構わないよ。1人でも多い方が賑やかだから歓迎だよ。それでいつ来る?こっちは基本的にいつでもウェルカムだよ」
「咲希、ホントありがとう。1度家に帰って聞いてみるから詳しい詳細が分かったらまた連絡するね」
そんな話をしていたら1時間目のチャイムが鳴った。
前に咲希からノートの取り方について指摘を受けてからそのやり方を取り入れてみることにした。すると小テストや抜き打ちテストでも自分の思っている点数よりもいい点が取れることが多くなった。
お昼ご飯を食べる時も英語でのやり取り、学校帰りにお互いの家に行き来したりどこか出かけたりと常に一緒にいる関係性を築き上げていた。
望実は咲希に帰りだけど商店街のコロッケ食べに行こうと誘った。
「いいよ、あのコロッケ美味しいのにあの値段ってスゴいコスパいいよね。仮にコロッケ売り切れていたら違うもの食べようよ。他のコロッケとかも絶対美味しいと思うよ」
咲希はテンション高めで商店街に向かった。
この前商店街に来た時より大勢の人がいて看板には名物コロッケは既に売り切れていた。
望実は売り切れていて嘆いていた。
「望実、名物コロッケ売り切れってことは別のコロッケやフランクフルトを新たに試せるチャンスだよ。名物コロッケあったら絶対買っているでしょ」
「咲希ってスゴいポジティブだね。言われてみれば名物コロッケあればまた買っているだろうし他の物を買おうってなっていたか分からないよね。とはいってもコロッケだけでも何種類もあるしどれにする?」
すると咲希は提案した。
2人いるから違うコロッケ買ってお互いに食べあいこしようよ。そうすればコロッケのレパートリーも増えるし一石二鳥だよ。
「じゃあ望実はカニクリームコロッケにするけど咲希はどうする?」
「そうだね……。かぼちゃコロッケにしようかな」
望実たちの順番になり、それぞれコロッケを買って近くのベンチで食べあいこして2人で名物コロッケ以外にも美味しいコロッケあるね。
「咲希はだから望実言ったでしょ?自信満々な顔をしていた。食べ終わったけどこの後どうする?」
「商店街から少し外れた所にかわいい佇まいのお店あるから一緒に行こうよと提案した」
「咲希はそんなお店この近くにあったかな?とりあえずじゃあ望実に案内してもらおうかな」
雑貨屋に入り2人で雑貨を見ていると気がついたら2時間、かわいい〜と言うばかりで何も買わずにお店を出た。
家に帰るとパパは走って玄関にやって来た。
「望実、咲希ちゃんは何て言っていた?」
「2人でも3人でもいいよ。いつでもウェルカムだって。いつ来るのか教えてって言われたよ。それでパパとママはいつが都合がいいの?」
「とりあえず今週の土曜日、時間は向こう様の都合もあるからお任せすると伝えておいて」
「晩御飯を食べている時にパパってたしかスポーツ好きだったよね?」
「オリンピックや高校野球、プロ野球だけでなく何かしらスポーツがやっていたら観るかな。特に好きだったのは元プロ野球選手のプロ野球通算5000本安打を放った木村小次郎かな。今と昔で野球は違えどあの成績は不滅の記録だと思うよ。でも望実、木村小次郎なんて昔の野球選手よく知っているね」
「それが聞いたら咲希ちゃんの伯父だって、その木村小次郎選手」
パパはご飯を食べていた箸を落とした。
「えっ、それホントに言っているの?咲希ちゃんが帰った後にその話をしてくれなかったと何故か望実は強めに怒られた」
「あれ?言ったと思っていたけれど言っていなかったっけ?咲希ちゃんの家に行けば何かグッズあるかもよ」
パパはしばらくご飯が喉に通らず天を見上げて固まっていた。
ママは早く食べないとおかずが冷めるよとパパに諭した。しばらくしてパパは意識を取り戻したかのように再びご飯を食べ始めた。
この話をしてこうなるのならば実際に優姫の家に行ったら腰を抜かして動けなくなるのではないかと思いつつもこの事を優姫に伝えたらきっと喜ぶだろうと思っていた。
萌恋は晩御飯を食べ終わり食器を片付けると自分の部屋に入って優姫に電話した。
早速、晩御飯の出来事を伝えた。
「そんな家に遊びに来てもらうのを楽しみにしてもらえて嬉しいよ。じゃあ土曜日の午前10時に浦川駅で待っていて」
「じゃあそう伝えておくね」
「あとさ普通、来てもらう人に頼むのは烏滸がましいとは思うけれどラドールのシュークリーム20個買ってきてもらってもいいかな?あのシュークリームを佐藤や他の人にも食べさせてあげたいからさ」
「ホント咲希は他人の事を思いやる優しい子だね。そんなのお易い御用だよ。じゃあパパとママに伝えてくるから電話切るね。また明日学校で会おうね」
「望実は部屋を出てパパとママに土曜日の午前10時に浦川駅に来てくださいって。後、ラドールのシュークリームを食べたいから20個買ってきてくださいって」
じゃあ明日も学校だから先に寝るねとまた自分の部屋へと戻って行った。
サプライズ
土曜日、私たち桐島家は優姫に買ってきて欲しいと言われた近くの洋菓子屋ラドールでシュークリーム20個を購入して浦川駅で待っていた。
しばらくして1台の車がやって来た。
「咲希はドアを開けて望実、おはよう。さぁ、車に乗って」
執事の佐藤さんが運転していた。
パパとママは驚いていた。友達がリムジンを乗ってきたら誰もが驚くだろう。私たちは車に乗り込み川本家に向かった。
「咲希は不躾なお願いだと思いつつもラドールのシュークリームを買ってきていただきありがとうございます。1度食べた時にこのシュークリームは是非とも他の人にも食べて欲しいと思い、望実さんにお願いしました」
「するとパパは持ちつ持たれつだよ。親戚が戻りプロ野球選手の木村小次郎や小野寺浩子って望実から聞いたよ」
「咲希はありがとうございます。父はアパレルの社長で母はアパレル店の社長をしていて2人とも1代で築き上げてといった感じになります」
「ママは傍から見れば令嬢って感じなのにスゴい謙虚で全く驕るような態度じゃなくて驚いたよ」
「小学校の頃からお嬢様だのご令嬢とクラスメイトや一部の先生は咲希をそういう目で見ている人がいました。でも実際は親や親戚がスゴいだけで私が何かを成し遂げたということでないのでその辺は勘違いせずにいることが大事かなと思います」
「始めて咲希と出会ったのが高校の入学式でどこに座ったらいいか分からずにいて聞いたら優しく丁寧に答えてくれた時はそういう雰囲気感じなかったから始めて家にお邪魔させてもらった時は驚いたね。パパもママもその家に今から行くけどね」
「望実さんと仲良くさせてもらって令嬢だからっていう感じではなくあくまでも1人の同級生、1人の女の子として同等に接してくれてありがたかったです」
そういった話をしていると錦城にやって来た。
望実は何度見てもスゴいな、パパとママは目が点のようになっていた。この段階でこんな驚いていては優姫の家に着いたらどんな反応をするのかと思っていた。
家の前を通り過ぎた。
「あれ、咲希通り過ぎちゃったよ。どうするの?」
「今ね、入口はメンテナンスしているから裏から入るようにしていてさ。裏からならすぐに家のすぐそこまで行けるからさ」
「1つ聞きたいけれど裏から行くのはメンテナンスの時だけで普段は人や車は出入り出来ないの?」
「ううん、そんな事ないよ。どうして?」
「じゃあこの前2人で来た時、入口で色々やってとかせずに裏から入った方が早かったと思うけれど……」
「その時裏から入る?そうだよね。そうすればあんな手間かけて行く必要なかったね。さすが望実、今の今まで気づかなかった」
パパやママ、そして望実はクスッと笑った。
「咲希ってしっかりしているのにたまに抜けているというか天然というか。よく天然って言われない?」
「自分では天然だと思ったことないけれどまたに天然って言われることはあるよ」
「なるほど、咲希は筋金入りの天然だなと心の中で思っていた」
しばらくすると?着きました。ここがの咲希家になりますと運転をしていた執事の佐藤さんは降りてきてドアを開けた。そしてパパとママは家を見上げて固まった。
ここは家なのか?それともここは城なのか?パパとママは状況を受け止められず顔は青ざめ、足元は震えるような感じでいると執事の佐藤さんに促されて家のトビラを開いた。
家の中は美術の教科書にも出てくるような美術品がズラリと飾られていて私が前に来た時にはなかった骨董品等が数々と並べられていてパパとママは唖然とする一方、望実はこの家はいつ来てもスゴいなとその一言しか出てこなかった。
咲希ら私たち桐島家を客間に案内をした。
「そうだ、咲希に頼まれていたシュークリームを渡さないとね」
「佐藤、冷蔵庫にシュークリームを入れておいて」
「咲希さん、畏まりました」
佐藤さんは咲希に他の方々が来られるまで家を案内をされてはいかがですか?
「ん〜……。それもそうだね。お客さんをただ客間で待たせるのも失礼だから家を案内して時間を過ごした方がいいよね。じゃあ望実、お父さん、お母さん家をご案内させていただくので付いてきてください」
まずはこちらが咲希の部屋でアイドル部屋、隣の部屋がスポーツ関連やアニメグッズを置いている部屋になります。そして御手洗があり、その隣が寝室でぬいぐるみと共に寝ています。
パパとママはただただ頷き、趣味だけで2つも部屋があるのか。それも寝室はアニメの令嬢や大富豪のご子息が寝ているようなベッドで言葉が出てこなかった。
では次に咲希が勉強している所にと案内した。
「パパは思わずここは……図書室、いやそんな規模じゃない。ここは図書館で咲希ちゃんホントここで勉強しているの?勉強しているというにはデカすぎて半信半疑で思わず言葉が出てしまったようだ」
「咲希は勉強部屋って言うわけではありませんが確かにここで勉強しています。この中には普段読むような本から参考書、各ジャンルの物を置いてあります。気になるものがあれば手に取って読まれても大丈夫ですよ」
パパとママは驚きのあまり言葉が出なかった。
優姫は次に行かれますか?どうされますか?
「ママはあくまでも自分たちはお客さんの立場なので……じゃあ次、お願いします」
望実は咲希に囁いた。
「次に行くのってペロちゃんのところ?」
「うんそうだよ。人懐っこくてきっとお父さんもお母さんにもきっとかわいがってくれると思ってさ。人見知りしないし人を見つければ悪い人じゃなかったら基本的にペロペロしてなでなでして欲しい顔をするからさ」
そして咲希はペロちゃんの部屋に案内をした。
部屋に入ってペロちゃんは望実に飛びついて顔を笑顔でペロペロ舐めていた。
望実は頭を撫でるとするとより一層喜ふと今度はパパの方を見て「く〜ん」と鳴いた。
そして頭を再び撫でるとまた笑顔になった。次にママの方を見てシッポを振っているとかわいい〜と頭を撫でると顔をペロペロした。
パパは俺だけどうして顔をペロペロしてくれないのかと軽く嫉妬しているとペロちゃんはパパのもとにやって来てシッポを振り、笑顔で顔をペロペロするとパパも満足そうにニンマリしていた。
すると内線が鳴り、咲希が電話を取った。
「咲希さん、他の方々もおいでになりました」
「ありがとう。今から客間に戻るね」
「すみません、他の方々も来られたのでまた客間に向かいます。ペロちゃん、また1人にしてゴメンねとひと言かけて部屋を閉めて客間に戻った」
その客間にはあの木村小次郎と小野寺浩子が座っていた。
「パパとママは思わずえっ、ホンモノ?そっくりさん?どっち?2人は自分の持っているスマホで名前を検索するした。
ま、まさかホンモノの木村小次郎と小野寺浩子に会えるなんて思いもしなかった」
「小野寺浩子は今や普通のオバサンですよ。木村小次郎も今となっては野球界から離れた一般人です」
とはいいつつもパパとママにとっては憧れの人に会えたことには違いない。
「佐藤さんはお昼どうされますか?」
「パパはお昼どうする?でも出前を取るような雰囲気ではない。佐藤さんのいうお昼どうするとはどういう事なのか?」
「浩子はわざわざ来ていただいたので好きな物を食べましょう。私たちはいつでも食べられるのでお任せします」
「ママはじゃあそう言うのならば……お寿司で」
私たちはここに来ればいつでもって言葉になんと言ったらいいものかと頭がこんがらがっていた。
佐藤は電話で寿司職人を呼んだ。
10分後、寿司職人がやって来て何が頼まれていいように具材とシャリを持ってきて一般人と元芸能人、元プロ野球選手、そして執事と共に寿司を食べるという異様な光景が見られた。
みんなでたらふくお寿司を食べるとシャリとネタは材料庫に1度閉まっておやつとして寿司職人を含めてみんなでシュークリームを食べた。
浩子と小次郎はこんな美味しいシュークリーム食べたのは始めて。昔から応援させていたみたいなので是非写真でも撮りませんか?
2人はスマホを執事の佐藤に渡した。
普通ならばいつも応援しています。写真撮ってくださいという流れだが今回は逆に応援してもらいありがとうございますと申し出てくれた。
パパは木村小次郎、ママは小野寺浩子とそれぞれ写真撮ってもらい握手を交わした。まるで夢のようです。ありがとうございます。
時計を見ると午後4時になろうとしていた。
「ママはあまり長居をしてもご迷惑だと思うのでこの辺りでお暇させていただきます。今日は私たちのワガママを聞いていただきありがとうございました」
小次郎と浩子はまたお会い出来たら嬉しいです。パパとママは思わず泣いてしまった。
佐藤は車をご用意させていただきますと客間を出た。
私たちは一礼をして客間を出て咲希と共に表に出ていった。
再びリムジンに乗り込み浦川駅に向かって行った。
「咲希ちゃん、今日は私たちのワガママを聞いていただきホントにありがとう。家の大小関係なくこれからも是非とも望実と仲良くしてもらえたら嬉しいです」
「こちらこそ今日はシュークリームを買ってきていただきありがとうございました。これからも望まみさんとは仲良くしていけたらなと思います。望実さんも含めていつでも遊びに来てください。その際はいつでも迎えに参ります」
そんな会話をしていたら浦川駅に着いた。
「咲希、今日はありがとうね〜」
「望実、また月曜日会おうね〜」
その日の夜、晩御飯を食べつつあれは現実だったのか?夢だったのか?てもスマホの写真には憧れの人写っている。これはきっと明日になれば状況を把握する事が出来るはずだとそれぞれ寝室で寝た。
翌朝、起きるとパパとママはシャンデリア、ペロちゃん、寿司、小野寺浩子、木村小次郎と昨日あったことを唱えるようにずっと言っていた。
どうやら私のパパとママは未だに現実ではなく夢だと思っていた。
たが、しかし3人で咲希の家に行ったことは確かである。
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