小説家・天ノ川夜一

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「あー見覚えのある顔だと思えば、カフェのアルバイトの子か」 「すみません、編集者さんとの会話で知ったので……」 「あーそれでか」 「あと先輩から聞いて……」 「…なあ、その先輩ってさ、褐色肌で天パで、泣きボクロの男か?」 「あ、やっぱりティキさんのこと知ってるんですね!」  夜一さんが深いため息をつくと、背後から声が聞こえてきた。 「ようやく見つけたぜー!」 「お前なぁ、何余計なことを話してるんだよ……」  振り返ると黒を基調とした貴族のような人が立っていた。 「もしかして、ティキさん?」  というか、昔どこかで見たような…。 「ふうん、何か隠しているなと思ってたけど、そういうわけね」 「え?ええ?」 「仕方ない。ここはオレも白状しておくか」  メガネを外し、改めて私に向き直った。 「オレは天ノ川夜一。フリーの血盟であり『禁書使い』だ」 「禁書使い?」 「えっと……」 「この子は龍ヶ崎(りゅうがさき)千尋(ちひろ)ちゃん。家ないんだってさ」 「……ホームレス!?」 「はい……」 「ハハハ!なーんか親近感わいちゃってさ!オレも浮浪者だったし」 「それはそうと、禁書使いって?」  ふーむとまじまじと私を見る。 「ここでも平気なら素質はあるんだろうなぁ。まあ平たく言えば物語の世界が現実に侵食するのを防ぐのが役目ってこと」 「禁書を使って?」 「禁書と言っても堅いものじゃない。純文学から漫画まで。今回はホラー小説だな。だから業血鬼と相性が良すぎたんだろう」  内容から察するに、吸血鬼関連の本が現実に侵食されかけたらしい。さらに言えば、先程封印が済んだようだった。 「今回は汚染が軽かったせいだろうな。思ったよりあっけなかった」 「へえ……」 「あ、信じてくれるんだ」 「いや普段が非日常すぎて、こういうこともあるんだなとしか」 「ああ、そういう…」  ふとスマホのメールを見るとパートナーである吸血鬼からだ。 「あ、私行かないと!」 「千尋ちゃん」 「?」 「オレのこと、秘密にしてね」  月光に照らされたあどけない微笑みが銀色に輝いていた。
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