プロローグ

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 8cf8b917-e656-4ac7-ac68-35943c633f39  広島宇品港から、フェリーで揺られること二十分。  広島市の真南に位置する江田島。  戦前、江田島といえば海軍兵学校そのものを意味していた程である。  世界三大士官学校のひとつにも数えられ、総計一万二千余名の卒業生を送り出したこの学校は、旧帝國海軍とは切っても切れない関係があり、現在では海上自衛隊幹部候補生学校として毎年多くの幹部候補生を輩出している。  そこには日露戦争を始め、第二次世界大戦までの旧海軍の歴史資料が保管されおり、東郷平八郎の遺髪、勝海舟の書物、特攻隊員の遺書などが展示されている。  東京の靖國神社内にある遊就館や、鹿児島の知覧特攻平和会館にも特攻隊員の遺書が展示されているが、どれも達筆で悲壮感溢れる書面には感動を覚えざるを得ない。  それは、この様なものを再び書かせてはいけない、この様な歴史を繰り返してはならない、という強い思いを感じさせてくれるものだった。  私は以前、この学校を私用で訪れた事がある。  その際にタイミング良く居合わせた教官を務める人物が、展示されている文献資料の解説をしてくれた事があった。
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