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「そうか徹、よぉ気効くのぉ。ほな行くで、克平」
そう言って日比野の肩を掴み、お互い顔を見合わせニヤリと笑うと、ふたりで建物の奥へと足取り軽やかに消えて行った。
三宅は辻岡が去った事を確認すると、表情を一切緩める事なく、その場に残った中井に問いかけた。
「中井君、どうやら状況は思っていた以上に深刻そうだね。その後だが、何かわかった事はあるかね?」
三宅の留守を預かっていた中井は、謝意を込め一礼すると状況を話し始めた。
「はい。申し訳ありません、三宅少将。このままだと聯合艦隊まるまる足止めを食らってしまう事も危惧されます。一度や二度補給を絶たれたならまだしも、こう度重なると士気にも影響するでしょう。既に兵員の中には、現状を不安視する声もちらほら」
「うん、それは危険だね」
「それに最近、ここ夏島の施設内に於いて聞き捨てならない不審な動きを入手しまして。それについて詳しく調査させているところであります」
「不審な動き? 詳しく聞かせてもらえるかな?」
「はい」
中井は半歩ほど詰め寄ると、三宅の耳に顔を近付けた――。
一方、軍施設内の食堂では、辻岡が夏島に来るとの事で簡単ではあるが小宴が用意されていた。
「おぉ! なんや、お前飲めるクチやないか」
「日本らん児がこりくらいれ……よ、酔いちゅぶれる訳に……」
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