45人が本棚に入れています
本棚に追加
国の為に死んで来い。死を恐れるな。そう軍内で教えられ叩き込まれたた若い兵員たちは、その言動に誰もが目を丸くし言葉を失った。
「そうや、誰も死にたい奴なんかおらんやろ……死ぬ為に戦争しとんのか? 何がなんでも生き残ってやりたい事をやったらええんや、それの何が悪い?」
辻岡は穏やかな口調で未だ経験の少ない若者を諭すように、ゆっくりと話し続ける。
「商売して金儲けでもするか? なんか趣味でもスポーツでも一生懸命するんも良し! 女に恋してフラれるんもえぇやろ? 人生は楽しんだもん勝ち、人に迷惑かけなんだら何をしてもえぇんや」
辻岡の言葉に吸い込まれるように耳を傾ける若い兵員達。その中のひとりが辻岡に聞こえないよう、小さな声で隣の兵員に耳打ちする。
「意外と辻岡少将って、まともな話するんだな……もっと、無茶苦茶な人かと思ってたよ」
内緒話にしては声が大き過ぎた。その声に気付いた辻岡は話を止めるとその兵員の前に立ち、まじまじと顔を凝視する。
(殴られる……)兵員は、そう思った。
すると突然、その若者の股間をギュッとを握り力を入れる。
「ぎゃっ!」
咄嗟的に声が出るが、辻岡はそれを掴んで離さない。
「やっぱ女は気持ちえーぞ! お前はもうヤッたんか? 童貞ちゃうやろな?」
まだ年端も行かない若い兵員を揶揄う。
「す、すみません。やっぱ、前言撤回です……堪忍してください」
最初のコメントを投稿しよう!