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「私も、私も、日本を……うっ……家族を守りたいと思って戦ってます。でも……アメリカも……うっ……同じ事を思ってる筈なんです。家族がいて仲間がいて愛する人がいる。故郷に帰れば笑って過ごす……家族が……家族が……うっ、うえっ」
感情が交錯し言葉を詰まらせる。涙ながらに話す野本を優しく見つめ黙って聞く辻岡。
ひとつ大きく息を吸い込み、深呼吸すると野本は更に続けた。
「戦う事と守る事は矛盾無き等しいもの。そう思うてました……じゃけど、じゃけど生まれた場所が海の向こう側じゃ言うて、人を殺していい理由になるんじゃろか? 同じ人間同士が銃を向け合い殺し合う。これが本当に正しい事なんじゃろか……少将殿……ワシはどうしたらえんか教えてつかぁさい」
辻岡は野本に歩み寄ると、俯く顔を覗き込み肩をポンと叩いた。
「お前は、優しいやっちゃのぉ? なんでこんな優しい奴が戦争で殺し合いせなあかんのかの? でもな酒屋、戦争では撃たな守られへん事やってある……撃ってえぇんは、撃たれる覚悟があるもんだけなんや」
野本は涙を拭きながら、先程までの軍人らしからぬ自分の発言を悔いた。
「すみません……心底憎い米兵の筈なんですが、酒が過ぎました。お願いします! 忘れてつかぁさい」
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