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この軍施設内にいる筈のない女性の声に、室内は一瞬静まり返ったが、しばらくするとバタバタと声の方へ人が集まり出す。
「なんや、なんや。どないしたんや」
辻岡も野次馬根性で遅れながらも部屋を飛び出し、人集りを掻き分け野次馬たちの最前列へと出る。
そこには着衣の乱れた現地の民間人女性に、馬乗りで覆い被さる野本の姿があった。
「あ……あいつ、ほんまにやりよった」
その現場に誰よりも早く到着し、野本と女性を引き離しに向かったのは、なんと道端であった。
女に重なり倒れ込む野本をそのまま引き摺り起こすや否や、立て続けに顔面、腹部と休む間もなく鉄拳を撃ち込む。
「貴様ーーっ! 帝国軍人ともあろう者が、このような場で民間人を陵辱するとは何事だーーーーっ!」
もう既に腫れ上がった顔面や裂傷した唇から大量の血を流しながらも野本は必死に訴える。
「違うんです……違うんです……これは、この女が……」
「違うものかっ! ならば内通のもと軍施設内に女を招き入れ、堂々とやってたとでも言うのか! 尚更、言語道断! 恥を知れーーーっ!」
すると倒れ込んでいた民間人の女性が、乱れた服を直しながら野本を指差し片言の日本語で話す。
「こ、この男に金をやると呼ばれてやって来たら、いきなり乱暴され……」
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