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…確かに。椎名のあの毒舌。アタシは構ってもらえる事に、喜びを感じているのかも知れない。だが、本当は知っているのだ。椎名がとても優しい事を。
教科毎の担当の教師から頼まれ、資料室に資料を取りに行った時、一人じゃ重いから、とついて来てくれた。三年の男子から絡まれていた時、助けてくれた。河川敷に捨てられていた仔犬を、連れて帰る場面にも遭遇した。そして、産気づいて動けなくなった妊婦に付き添い、一緒に救急車で病院へ向かい、向かった病院の医師から旦那と間違われた話には、正直『オイオイ、コントかよ』とも思い…。
いい奴なんだよね…椎名。
そんなギャップ大ありの椎名に、アタシは惹かれていった。たとえ、アタシが特別になれないとしても。
「オイ、W椎名!」
担任の山多がアタシと椎名を呼ぶ声に、クラスの皆の手が止まった。
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