い、ろ、は。

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ーこの季節になると思い出すー 君がいてくれたから、僕は今ここにいる。 と言ってみたかった。 何故、こんな気持ちなのか。 清らかな佇まいをした梅の花を「桜」だと見間違うように、僕は君の気持ちを読み間違えた。あのとき、僕が間違えなければ、君の気持ちを理解していれば、、、未来は変わったか、な。 僕、長留 一が彼女と出会ったのは、たしか。そう、新月の夜。コンビニにアイスモナカを買いに行った帰りだった。アイスが入った白色の袋を揺らしながら、家への帰路を歩いていた。途中で通る公園。いつもは見ないのに、そのときは何故か、立ち止まってしまった。フェンス周りが木々で囲われた公園だが、ブランコが揺れていた。そのブランコに乗っていたのが、彼女だった。雪のように淡い色のワンピースを着た、女性がブランコに乗ったまま、月を見上げていたのだ。 その姿が、綺麗だった。月に吸い込まれてしまうのではないかと思ってしまうほど、透明で消えてしまいそうだった。 あのときの僕に尋ねたい。ーなぜ、彼女に声を掛けたのかーそのときのはっきりとした気持ちは覚えていないが、これだけは覚えている。声をかけずには居られなかった。…気づいたら話しかけていたことを。 佐奈良 琉李、それが彼女の名前だ。 見たことも会ったこともなった彼女に話しかけた。彼女の後ろ姿をほっておけなくて。
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