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ショップ内にお客は一人もいなかった。よくあるケータイショップのように、色んなスマホやタブレットが展示されているわけでもなく、正直ほんとにショップか? と疑いたくなるレベル。店員も一人しか……え? クッソ美人なんですけど!
もうね、店内のその部分だけが光り輝いているようなもんですよ。俺ごときが声をおかけしてしまってはいけないようなレベル。どうせゴミクズを見る目で見られて……。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
にこやかに話しかけられた。まぁ考えてみれば当たり前の事なんだけど、俺は他愛もなく舞い上がってしまった。
「は、はい!」
思わず気をつけの姿勢で返事をし、彼女に誘われるまま、彼女の正面の席に腰掛けた。(まぁ、カウンター越しに店員とお客が向かい合って座っているというだけだけど)
約1メートルの距離で見ると、だいぶやばかった。少し茶がかった髪をショートボブにしていて、大人っぽい雰囲気の美人である。その大人っぽい雰囲気にそぐわないくりっとした大きな目。ある種のアンバランスさを醸し出して、妖しい美しさとなっていた。
俺は彼女の胸に目を下ろした。
Oh……。
制服の胸ボタンがはちきれそうなボリューム。
彼女の胸に触れていられる代償が、この引きちぎられんばかりの引っ張り荷重ということか。
胸元からちらっとのぞく谷間は狭く深い。この谷間で窒息しt……。
「あの、お客様?」
はっと顔を上げると、彼女が俺の顔を訝しげに見ていた。
「あ、は、はい!」
俺は思わず、立ち上がって気をつけをするような気持ちで(実際には立ち上がっていない)うわずった声を出した。
彼女はにっこり笑ってスマホのパンフレットを差し出した。
「ええと……」
俺は彼女の名前を呼ぼうとして言いよどんだ。実はさっき彼女の胸を見たのはネームプレートを見ようとしたんだけど、胸の方に神経が集中しちゃってネームプレートが目に入らなかったのだ。
「あ、私、本日担当させていただきます、水沢優姫と申します」
彼女――水沢さんはそう言って、自分のネームプレートをつまんで俺に見せてくれた。俺としては彼女のすばらしいバストをもう一度眺める恩恵にあずかれたわけだ。
「当店にいらしたと言う事は、機種変更されたい、という事でよろしいですか?」
優姫さんの声はとても耳心地がよかった。これじゃあ男はみんなめろめろになって高額商品でも何でも買っちゃうだろうなぁとうらやましくなった。営業成績なんか気にしたことないんだろうなぁ。
この時、そんな彼女がいるこのショップが何故こんなにも閑散としているのかを考えていれば、これからの展開は変わったのかも知れない。でもその時の俺は、そんな事はちらっとも頭をよぎらなかった。
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