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「あ、でも、それもう壊れて……」
「大丈夫ですよ、お任せ下さい」
優姫は俺のスマホを持って奥へ入ると、すぐに戻ってきた。
「データ転送を開始しましたので、お客様はゆっくりと内容をお読みいただいた上でサインして下さいね」
優姫はにこやかにそう言うと少し前かがみになって俺の手元を覗き込んだ。
俺は確信した。先ほど手を合わせたのも、今こうして覗き込んでいるのも、わざとだ。わざと胸を強調しているに違いない。俺を誘惑しようとしているんだ。その手には……乗ってしまいかねないぞ。この子なら、何の後悔もなく嫁にできる!
いや普通ならこの契約が詐欺なのではないか、だまそうとしているのではないかという方に思考がいくものだが、そこは欲望に負けやすい男の浅はかさ。俺は優姫の胸元をちらちら眺めながら署名欄にサインした。
「はい、ありがとうございました。これで、あなたは最新機種のオーナーになります」
優姫は俺のサインをよく確認して言った。
「良かった。じゃあさっそく、君の連絡先を……」
「それではお客様、機種代その他の初期費用のお支払をお願いします」
あれ? 確かタダって。
「最初にご説明致しました通り、初期費用としてお客様の今後の人生をいただきます」
「そ、それってどういう……?」
優姫はにっこり天使の笑顔で、悪魔の一言を放った。
「お客様には、死んでいただきます」
それは全ての終わりであり、始まりだった。
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