【新橋姫】

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  女「だって言うとったもん」 男「誰が何をだね?」 女「貴船(きふね)明神(みょうじん)サンが」 バラバラにすれば……運び易いよ、って。 男「神様が人殺しを是認すると思うのか?」 女「ほんなら古事記はどないやの?ギリシャ神話は?どれも神サン同士で殺りあっとるやん」 神様の物語なんて俺は知らん。通らずとも今まで生きてこれた。少なくとも神社でお参りするのに殺し殺された神サマとやらを縁起担いで祈るというのは違和感があるだろう、とその程度思ったことだ。 女「それに、恋人やない」 男「友達か」 女「まさか」 男「じゃあ君は、なんら関係ない人間を、その包丁を使ってバラバラにしたとでもいうのか。世間ではそれを正常とはいわないんだ。ただの人殺し。犯罪だ」 女「"犯罪"を作り出してるのは"法律"の方とちゃうん?」 その返しに、あやうく俺は彼女が正常だと思い込むところだったが、すぐさまそれが屁理屈だと悟った。 女「それに、関係ないとも言うとらんよ私」 男「じゃあ、その可燃ごみ袋のなかに入ってるバラバラに刻まれたそれはなんだね。誰のバラバラかね?」 女「叔父(おじ)さん」 男「……親戚、か」 女「早とちりせんでよ。私のやのうて、あの方の」 男「あの方……?」 女「ぷらんぷらんサマ、ほら最近VTuberのなんやらと付き合いよった」 男「そのなんちゃらって人の親戚の人?」 女「せやで」 男「……動機は?」 女「まるで取り調べやな」 男「取り調べだ」 警察ではあるが、生憎今日は非番で手帳も持ち合わせていない。それでも女はどうでもいいというように右眉をぴくりとあげ、そっぽを向いた。  
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