【新番町皿屋敷】

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    ふたたび正面を振り向き、水平線(すいへいせん)(なが)めながら、 僕はひとり、(がけ)から落ちた。 死んで初めて僕は、心から人を好きになった。 僕は、この手で殺した女(ヽヽヽヽヽヽヽヽ)と、冷たく無限(むげん)に敷き詰められた石針(いしばり)のような海のなかで結ばれた。 菊にしてみれば、こんな海の水、痛くもなんともないだろう。君が突き落とされた井戸(いど)の水に比べれば。氷柱(つらら)の世界に沈む青山を、菊がずっと後ろから抱きしめ、菊はひとりこう想った。 すべてのお皿が(ヽヽヽヽヽヽヽ)いま割れた(ヽヽヽヽヽ)、と。 ───了
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