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「同盟?」
「はい。自殺同盟です。お互いが気持ちよく自殺できるように手助けするんです」
甘栗は手を差し出しながら微笑んだ。手を取ったら同盟は成立だと言う示しである。やっと話が理解できる人と出会ったかのように。新が見てきた死体や死ぬ瞬間はどれも苦しい表情を浮かべていた。自ら死を望む人は甘栗を除いていない。
だが、新は差し出された手を握らなかった。
「ありゃ? 同盟は不成立ですか?」
甘栗は不安そうに聞きながら手を引っ込めた。
「同盟を組みたい気持ちはあるが、僕はまだ君のことは知っているようで知らない。だから少し抵抗がある」
「逆に聞きますが、お互いのことを深く知る必要はあるんですか? どうせ死ぬのに。死んだら関係ないじゃないですか。この同盟はお互いが気持ちよく自殺する為のもの。言わば、同じ目的同士で手を組む関係です。そう考えたらどうですか?」
確かに甘栗の言う通りだ。別に深くお互いのことを知る必要はない。逆に知れば知るほど自殺しづらくなってしまう。だから甘栗の言うことは正しいとも取れる。
考えた末に新が出した答えは。
「じゃ、そういうことなら」と新は手を差し出す。
「はい。これで自殺同盟成立ですね」
両者の手はしっかりと握られた。これで正真正銘、もう新は後戻りができない。
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