第一章 自殺同盟

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「帰りましょうか」  甘栗は扉に手を当てながら言った。 「もう、いいのか?」 「今日のところはいいです。明日……いや、今日学校なので」  日付が変わってから明日と言うべきか今日と言うべきか悩ましいところがあるだろう。この場合、どっちの表現が正解なのか誰も判断がつかない。 「親は大丈夫なのか? 今頃、行方不明届を出されているんじゃないのか?」と新は甘栗を心配するように言う。 「その点は心配いりません。親は今、出張中なので問題ありません」 「そうか、でも一人で帰れるか? 最近物騒だし」 「心配ご無用です。それでは」  甘栗が部屋から出ようとした時、「あ」と口に出して立ち止まる。 「新道さん。今日、予定ありますか?」 「今日? 帰って寝るだけだよ。無職だし」 「そうですか。それなら今日の二十一時にもう一度ここに来てくれませんか? いいもの見せてあげます」 「いいもの?」 「はい。その時のお楽しみです。必ず来て下さい。必ずですよ。じゃ、おやすみなさい」  甘栗は手の平を見せながら涼しい顔で部屋から去っていく。新は一人、その場に取り残された。新は甘栗が去った後、しばらくその場から動けずにいた。  これは夢かと新は頬をつねるが痛いのは当たり前だった。  新道新と甘栗紅葉の接触がこの後、災いを起こすことはこの時は誰も分からない。  他人の死を目撃する不思議な体質を持つ死神の子、新道新。そして、自殺願望がある女子高生、甘栗紅葉。あってはならない組み合わせが一夜にして交わった。それがどういう意味を示すのか、それは翌日の夜に明らかにさせる。
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