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顔を合わせればいつもこのような話になるのが新は堪らず嫌だった。
母親も母親で言いたくて言っている訳ではないが言わない訳にはいかない。
最終的には母親が折れて負けるが何度でも言い続けた。
数時間後、母親が風呂に入っているのを確認した新は忍び足で台所に向かう。
新は無職になってから家族でテーブルを囲んで夕食を取ることはなくなった。顔を合わせれば就職の話が目に見えていたからだ。だからこっそりとご飯を取りに行く。
その時である。残業を終えて帰ってきた父親と新は台所で鉢合わせした。
新はお盆に夕食を乗せて自室に持って行こうとする。
母親と同様、父親とも顔を合わせてくない新は一刻もその場を去りたかった。
「就職活動はどうなんだ」
不意をつくように父親は新に問う。
「まぁ、ボチボチ」
「ボチボチって何だ。やっているのか、やっていないのか」
「今はまだやっていない」
「ならそう言え。いつまでも無職を続けられると思うなよ。お前を養えるほどうちは余裕ないからな」
「…………」
「分かっているのか」
「分かっているよ」
「お前のダメなところはそういうところだぞ。何もかも曖昧で先のことを全く考えていない。それじゃいつまで経っても変わらないぞ」
「分かっているって言っているだろう」
「ちっ。まぁ、いい。そういえばお前、昨日の夜はどこに行っていた」
「どこでもいいだろ。子供じゃないんだからほっといてくれよ」
「呉々も人様に迷惑かけるんじゃないぞ」
新は答えることなく逃げるように自室へ走った。
「ちっ」
父親の正論に嫌気が差し、新は枕を壁に向けて投げた。
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