第二章 もう一人の自殺願望者

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父親とは血の繋がりはないが一緒に暮らすようになって十年以上。これまでぎこちなかったとはいえ、普通に接していたが、新が無職になってから一層当たり方がきつくなったと実感していた。成人した無職の息子ほどお荷物はないのだろう。そんなことは新自身分かっていた。しかし、どうにもなれない。現実が苦しくなった。自分はこの先、幸せは訪れない。新の今の選択肢は就職活動ではない。現実逃避だ。 「……早く死なないとな」  頭を掻き毟るようにそう呟いた。 時刻は二十時三十分。陽はすっかり暮れ、外は真っ暗になっていた。 家族の目を盗んで忍び足で家を出た新は例の廃病院に訪れていた。 自殺同盟というものを結んだ新は甘栗紅葉の自殺と自分の自殺を効率よくするように手を組んでいた。 当然、死について話し合うのに公共の場でする訳にはいかない。よって誰もいない廃病院でその話し合いをすることになっていた。 それに甘栗の見せたいものというのに釣られてノコノコと新は来ていた。
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