第一章 自殺同盟

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「そう考えるとこの死に方は正しくないと断言できます。死んだ後で家族を苦しめたくありません。新道さんに助けられてある意味良かったです。別の方法を考える時間が出来ました。ありがとうございました」  お礼を言われても別の死に方をされるのであれば嬉しいものではない。どうせなら自殺を辞めてくれたら助かるが、その気は無いのなら意味がない。  自殺を説得するべきか悩ましいところだ。まず、話を合わせて情報を引き出そうと新は考える。 「じゃ、正しい死に方ってなんだよ。そもそも死ぬのに正しいとかないと思う」 「死ぬのを前提なんですから考えてみて下さい。話を戻しますけど、死に方には数え切れないほど種類があります。死因から死ぬまでのシミュレーションまで何通りもあります。それは人の数だけ無限にあるんです」 「仮に甘栗はどういう死に方をしたいんだ」 「そうですね。まず、美しく死にたいです。外傷はほとんどなく綺麗な状態が理想ですね。後、どうせ死ぬなら人助けをして死ぬのも悪くないと思います。新道さんのように私を助けた結果、死ぬというのもいいと思います」 「待て、僕はまだ死んでいない」 「あ、でも轢死なら美しい死に方にはなりませんね。難しいところです。新道さんはどういう死に方がいいですか?」  そう問われて新は考えさせられた。新には死ねたらそれでいい。こだわりは特にないのだ。あるとすれば痛くない死に方だった。苦しんで死ぬのは好ましくない。 「とにかく痛くなければなんでもいいと思う」 「痛くない死に方……ですか」と甘栗は顎に手を当てて考える。 「知っていますか? 一番、苦しまずに死ねるのは安楽死らしいです。まるで眠ったように死ねるので痛みは一切ないそうです」 「確かにその死に方なら苦しまないだろう」 「でも、この死に方のデメリットは寿命なので今すぐ死ねません。私の場合、半世紀以上も待たなければなりませんので無理ですね。今、死にたいので」  笑顔で言う甘栗に対して疑問があり、新は聞いてみた。 「君は死ぬことが怖くないのか」 「えぇ、怖くないと言えば嘘になりますが、受け入れる覚悟はあります。人は必ずいつか死にます。だったら死に方くらい自分で決めたくないですか? 一番、死にたくない死に方は思いがけないことに巻き込まれること。誰かに殺されたり、交通事故や自然災害に巻き込まれるような死に方は好みません。だって心の準備が一切ないですもの。そんな死に方をしたら死んでも死に切れませんよ。だから私は自分の意思で死にたいんです」 「あぁ、それならなんとなく分かる気がする。僕もそんな死に方をしたら後悔すると思う」 「ですよね。やっぱり死ぬ時くらい好きに死にたいですよ」  と、何故か新と甘栗は意気投合する。話が弾んだ瞬間、何か違うと二人はすぐ冷静になった。 「いや、好きに死ぬのもよくない。親から貰った命だ。親の許可なく死ぬのは筋違いだろう」  新は自分に言っているようで心苦しかった。人に言う前にまず自分からだった。 「あぁ、それならご安心下さい。親は好きに死になさいと言われてますので」  まさかの親の許可済みだ。甘栗の親は一体何を考えているのだろうか。普通、嘘でもそんなことを許可するだろうか。間違っても娘に好きに死になさいとよく言えたものだ。  まさに親の顔を見てみたい。甘栗はまだ裏がありそうだ。
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