七日目、泡沫の行方

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 ゆらゆらゆら。私は再び堕ちていく。  今度はハッキリと母の顔が浮かんだ。  お母さん、約束破ってごめん。悲しませてごめん。  何度も何度も心の中で謝りながら、揺らぎに任せて漂って、どこまでも堕ちてゆく。  今になって、母のもうひとつの言葉を思い出した。 『生きてさえいてくれればいいの。例えば揺がどこか遠くへ行ってしまって、会えなくなったとしてもよ。幸せに、生きてさえいてくれれば』  もしかしたら、彼の家族もそんな気持ちでいてくれたかもしれないのに。  それなのに結局、私が彼を泡にしてしまうなんて。  レイ、ごめんね。本当に、ごめん。 「揺!」  声に驚いた瞬間、凄い力で押し上げられていくのがわかった。しっかりと包まれながら、上へ上へ。  きっと、人魚だ。そう思って、目を開ける。    でも、彼には足があった。  海面から顔を出すと、私は何度も咳きこんでえずいた。溺れたせいと、嗚咽のせいと、両方で。  彼は私を抱えながら浅瀬まで導くと、目にたくさんの涙を溜めて言った。 「ごめん。ごめん……揺。全部嘘だよ。全部。……だから俺のことはもう」  私は力一杯彼を抱き締めた。悪いけどもう、どうだっていい。  彼が何者なのかなんて、どうでもよかった。  今、私が噛みしめることができるのは、彼がこの世にいるという事実だけ。 「レイ……良かった……レイ」   だけどやっぱり私は、きっと親切な、優しすぎる、お人好しの魔女のおかげだと思った。  だって私を包み込む彼の身体は、今とても温かい。 「ねえ、レイ。その髪、黒に戻してくれないかな。私、あなたの黒髪が好きなの」  この物語がハッピーエンドに向かうかは、これからの私達に懸かっている。  家族のこと、未来のこと、問題は山積みだ。  それでも私は、この恋をとことん信じようと思った。  だってこれは、彼が全てを懸けてくれた、大切な大切な恋だから。             おしまい
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