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揺らめく水中、一目惚れ
ゆらゆらゆら。目を閉じていても、眩しい光に包まれているのがわかった。
眠りに落ちる寸前のように、全身の力が抜け、心地よさまで覚える。
こうして私は死んでゆくんだ。そう、なんとなく実感した。
漠然としすぎていて、頭の中に誰の顔も浮かんでこなかった。走馬灯なんて流れない。
死とは、想像していたよりもずっとあっさりしたものなのだと、ぼんやり思いながら堕ちてゆく。
揺らぎに任せて漂いながら、ただ堕ちてゆく。
でも、あるところまで堕ちると、今度は上へ押し上げられるような感覚があった。それは瞬く速さで、自分ではどうすることもできない。
――――「……よう!起きて!揺!」
次の瞬間、ぼやけた視界に泣いている父と母の姿が現れた。
自分が今どこに居るのか、何をしていたのかもわからない。ただ、生きているということだけはわかった。……夢だった。どうりで苦しくなかったわけだ。
「良かった……。揺、生きてて……」
私が目覚めたことを泣いて喜んでくれる両親を見つめながら、混乱している頭を整理していくと、じわじわと恐怖がわいてきた。
死にかけたんだ。だけど助かった。どうして死にかけたのか、どうして助かったのか、全く思い出せないけど。
鼻の奥に、つんとした痛みを感じながら、白い布団に包まれ天井を見上げた。
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