六日目、初恋とは

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 耐えきれずに、涙が少しだけ流れてしまった。それでも私は、必死に笑った。  レイは何も言わなかった。  その声を、聞かせてはくれなかった。 「……レイ?」  まさか。 「レイ?何か言ってよ!」  彼は綺麗な瞳を潤ませて、優しく微笑んだ。そして、ゆっくり立ち上がる。 「待って!レイ!!声を聞かせてよ!お願いだから!」  嘘。嘘だ。そんなの嫌だ。  だってまだ、一週間経ってないじゃない。 「お願い……レイ、声を聞かせて」  彼はもう一度微笑むと、私に手を振り、海に向かって歩いて行く。 「待って!!」  私は必死に追いかけるけれど、海水に足をつけた途端、母との約束を思い出した。 「レイ!!嘘だって言ってよ!!レイ!!」  レイはそのまま海へ潜った。浅瀬なのに、海面を確認してもその姿はどこにもない。  私はなんてことをしてしまったんだろう。 『お願いだからいなくならないで』  きっと、レイの家族もそうだと思ったから。  もう二度と会えなくても、彼が海で元気に泳いだり、歌ったりできれば、それでいいと思ったのに。 「レイ!!」  その場に崩れ落ちて、泣きながら何度も彼の名を呼んだ。    何度呼んでも返事はなく、虹色の泡がいくつも浮かんでは、静かに揺れていた。
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