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七日目、泡沫の行方
次の瞬間、目が覚めた。
もう、一体何が夢なのか現実なのかわからない。
だけどまだ、あの温もりのない冷たい感触が、確かにこの身に残っていた。
「レイ!!」
部屋を飛び出すと、当たり前だけれどダイニングに彼の姿がある筈もなくて。
「何言ってるの。冷くんなら、昨日帰ったじゃない。海外からご両親が迎えにきて。一緒に挨拶したでしょ?」
「そんな……」
これも、親切な魔女の仕業だって言うの?
いてもたってもいられずに家を飛び出して、また昨日と同じ海に向かっていた。
電車を乗り継いで、賑やかな観光客に混ざって。
焦ったって仕方がないのに、電車を降りると海まで全速力で走った。
夏休み明けと言えど、まだ海水浴のお客で賑わっている中、ひたすら、ひたすら走った。
「レイ!!」
昨日と同じように、彼の名前を呼ぶ。しかしやはり返事はない。
私は今度は別の人の名を呼ぶことにした。
「魔女さん!親切な魔女さん!お願いします!彼を助けてください!本当は、彼の恋は実っていました。私も彼が好きなんです!だからどうか……人魚のままで構いません!私はどんな罰も受けます。どんなものも差し出しますから……」
周囲の人達の冷ややかな視線も気にせずに、私は何度も魔女にお願いをした。
……きっとあの魔女ならわかってくれる筈。私は姿形も見たことのない、本当に存在するかもわからない彼女を、必死で信じた。
「お願いです!魔女さん!彼を……レイを助けて」
____「すげー波来るぞ!」
サーファーの人の声で気づいた時にはもう遅かった。
高波が勢いよく打ち寄せ、瞬く間に私を飲み込んだ。
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