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一日目、私には好きな人がいます。
「揺、お前の家に住まわせてくれ」
告白してきたくせに私の名前すら知らなかった彼に、一応自己紹介すると、早くも呼び捨てし始めた。全くもって不躾な人。そして居候を企てる始末。
水野くんは相当ヤバイ奴だ。
「大丈夫だ。もう揺の家族には話が通っている。魔女が良い感じに話をつけてくれた」
「はあ!?なんで魔女がそんなことまで!?じゃあ、もしかして転校も……」
「魔女が良い感じに手続きしてくれた」
「魔女……」
その魔女、お人好し過ぎやしない?お試し期間つけてくれるだけでもアレなのに、面倒な各種手続きも済ませてくれるなんて。
水野くんと話していると、私まで頭がおかしくなってくる。
しぶしぶ彼を連れて家に帰ることに。親が困惑して反対するのを理由に、彼の嘘を暴いてやろうという魂胆だった。
「お母さんただいま」
「初めまして!お世話になります!」
「あら、あなたが水野くんね。待ってたわよ!今日からよろしくね」
「まじょーーー!!」
益々わけのわからないことになってしまった。これは夢?おかしくなっているのは私!?夏休みに遭った水難事故のせいで、脳が変になってしまったんだろうか。
混乱している私をよそに、水野くんはズカズカと家に上がり込み、早速打ち解けた母とお茶なんかしている。
「冷くん、ご両親が海外に赴任中で、下宿先のお家が火事になっちゃったんだってね。大変だったわねぇ」
母、全部説明してくれる。
「いえ、親切な方々がいて下さって、助かりました。ところでこのお菓子、美味しいですね」
そう笑って、水野くんは厚かましく煎餅を貪る。
「ああ、それ美味しいわよね!たこ煎餅!」
「おえええええ!」
「大丈夫!?」
水野くんは盛大にリバースした。
まさか蛸の友達でも居たんだろうか。さっきから絶妙に信憑性をちらつかせてくる、芸が細かい水野くん。
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