二日目、水を得た人魚

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二日目、水を得た人魚

 次の日、朝食に出た鮭の塩焼きで、またもやリバースしかけた水野くん。無理しなきゃいいのに、と思ったけど、彼なりにこの生活に適応しようと努力しているのかもしれない。  途中まで辛そうに食べていた彼は、その美味しさに気づいたのか、ある瞬間から嬉々として鮭を口に運び、ついには完食した。  それはそれでちょっと怖かった。  水野くんに引いたポイントは、それだけではなかった。何故か彼の髪色が変化しているのだ。漆黒というほどの黒髪から、明るい茶髪になっていた。 「その髪、どうしたの?」  恐る恐る聞いてみると、彼は自分の前髪をつまみながら笑った。 「夕べ、魔女に変えてもらった!」 「また魔女!?」  魔女ってそんなことまで面倒を見てくれるのか。水野くん、魔女に無理を言い過ぎじゃない? 「これでアイツと同じだろ?」  満足げに言う水野くんの真意がわかってしまい、思わず顔が熱くなる。もしかして、悠くんと同じ髪の色に……。 「アイツよりカッコ良くなった?」 「……ない!」とついつい素っ気なく答えてしまう私を、しょんぼりとした瞳で見る水野くん。  彼の言う通り、水野くんは黙っていればそれこそアイドル並みに眉目秀麗だ。彫りが深く、目鼻立ちのバランスも良い。  だからなのか、転校二日目なのに水野くんの人気は凄まじかった。現に今、登校中に何度女子から声をかけられていることか。 「あのさ、昨日の話なんだけど……やっぱり考え直してくれないかな?」  いくら水野くんが美少年でも、私のことが好きだと言ってくれても、私は浮気をするわけにはいかなかった。三年前からずっと、悠くん一筋と誓っている。  しかし水野くんはキリッとした顔で私を見つめた。 「……いやだよ。絶対アイツからお前を奪ってみせる」  いや、奪うとか奪わないとか以前の問題でして……。 「一週間のうちに、惚れさせてみせるから!」  真っ直ぐな瞳でそう言われると、また何も言えなくなってしまう。どうしてこんなにも、一生懸命想いを伝えてくれるのか。彼が人魚かどうかよりも、私にとってはそっちの方が謎だった。
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