『他人の振りをしたい』

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『他人の振りをしたい』

 兄崎は他人の振りをしたいと思った。  ショッピングセンターのど真ん中にある雑貨店の入り口で、五十嵐と店員が同じ会話を何度も繰り返している。  二十分は経過した。  さらに、フレデリックも時折それに加わり、はたから見れば「一人の女性店員に執拗に絡むたちの悪い二人の男子学生」でしかない。  実に恥ずかしい。  半径二メートルは近寄らないでほしい。  兄崎は店員の困った顔を見ながら心の底から同情をした。  店員の笑顔は崩れない。対する五十嵐の表情も動かない。   大した物だと感嘆の息をつく。  何度も同じことを繰り返すクソガキ相手でも、女性店員は笑顔で拒否の言葉を繰り返すのだ。
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