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「ユウキ、腹減ったからクレープでも食べようよ」
兄崎は雑貨店の入り口で、店員と何度も同じやり取りをする五十嵐を見て、フレデリックを見る。
するとフレデリックは一つ頷き、笑顔を浮かべ五十嵐の口を後ろから手でふさぐ。
長い両手にすっぽりと包まれた小さな体がびくりと撥ねる。
「おねぇさん、ごめんね。この子頑固なんだ。ほら五十嵐、優紀がクレープ奢ってくれるって。俺も食べたいから早く行こう」
先ほどまで横槍を入れともに女性店員を困らせていた男は、何事もなかったかのように調子よく笑う。
「そうそう、お兄様がクレープ買ってあげるからもう諦めるんだ」
食べ物で釣ればすぐに縫いぐるみのことなんて忘れるだろうと思っていたが、五十嵐は眉間に皺を寄せ口を塞いでいた手に噛み付いた。
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