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「陥れる」【お題 海辺の三姉妹】
私達三人は朝日が綺麗な海辺に座っている。
水面がゆらゆら揺らめいて、私達の心を熱く燃え上がらせていく。
「お姉ちゃんが入水自殺してもう一年ね。」
「うん。」
「乙姉ちゃん、計画はバッチリ?」
「うん。大丈夫よ。松子。」
「亀子、申し訳ないけど松子にいじめられてちょうだいね。」
「うん。分かってるよ。」
「亀姉ちゃん、優しくするからよろしくね。」
「あんまり、強くしないでよ。」
乙姉ちゃんも松子も水面みたいに目がキラキラしている。ようやくこの日が来たんだもんね。
お姉ちゃんを苦しめて、虫ケラのように捨てたあの男への復讐の日が。
「よし、もうそろそろ海底へと潜るから二人も準備よろしく。」
虹色の羽衣を揺らしながら乙姉ちゃんは立ち上がる。
「うん。」
私と松子も頷いて立ち上がった。
三人で肩を寄せ合って誓い合う。
「あの男を必ず陥れよう!」
エイエイオー!と空へと拳を振り上げる。
「乙姉ちゃん、玉手箱だけ渡し忘れないようにね!あと、勢いで殺しちゃったらダメだよ。」
「分かってるよ。殺すだけじゃ足りない。年老いていつまでも苦しめばいい。もし苦しまなかったら…殺すまでよ。」
そう言って乙姫は水飛沫をあげ、海へと潜って行った。
私達も準備を始める。
亀の私が海辺へと伏せ、小さな子供の松子が木の枝を握る。
さぁ、準備はバッチリだ。
あとはあの男が来るのを待つだけ。
——太郎よ!覚悟しろ!
——お前を陥れてやるからな。
end
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