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かくして部活を引退してから、猛勉強した。人生でこんなに必死になったことはない、と断言できるくらいに、マジで寝食削って勉強しかしなかった半年。冬になって、東京に住む従兄弟の家に泊めてもらって受験に臨んだ。必死だった。だって、人生がかかっていたから。
結果、無事に合格した俺は、地元を捨てて上京した。
卒業式の日。これで彼も見納めかと思うと、何か話したいような…でも既にクラスも違ってしまっているのに急に話しかけたりしたら不自然か、とかウダウダ悩んでいるうちに終わってしまった。式の後、女の子たちにボタンをもぎ取られ、写真を撮りまくられ、それでも第二ボタンは死守した。
別に誰にあげる予定もなかったけれど、それをあげてしまったら、その相手が自分にとって特別だと周囲に思われるんじゃないか。自意識過剰といえばそれまでだが、とにかく誰かにあげるのはイヤだったから、自分で引きちぎってポケットにしまっておいた。はずなのに、家に帰ったら失くなっていた。どこかで落としたのか、誰かにとられたのか、もはや確かめようもなかった。
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