動揺

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だから、と。願わずにはいられない。 今日はどうか彼に逢いませんように。そして、成人した俺が一日も早く、彼の幻影から解放されますように、と。 あと2年。少なくとも2年我慢すれば、また彼は俺の人生から消えていなくなる。そしたら俺は、一生独りで生きていこう。もし誰かを好きになれたらラッキー、くらいに思っていればいい。諦めもつくし何より、期待しないで済む。 もし彼に気持ちを伝えたら、楽になるんだろうか。告白して、手酷くフラれたなら、諦められるのだろうか。俺という人間の中心に居座る、拗らせすぎてガチガチに固まった岩みたいに頑ななこの初恋を、ブチ壊したら前に進めるんだろうか。そう考えたのだって100回は下らない。 10年だよ、10年。我ながらよく我慢したもんだ。 それに比べたら、あと2年の我慢なんて何でもない。彼が俺の人生という舞台から去ってしまえば、空っぽのステージを照らすスポットライトは消えて、俺の人生も元通りの空っぽになるだけ。今までだって、そうやってやり過ごしてきたんだ。だから、こんなの、何でもない。 彼は、小動物みたいな笑顔の可愛い女の子といつか素敵な家庭を築くことだろう。その輝かしい人生に、男から告白された、なんて黒歴史を挟む必要がどこにある。 彼の人生に、俺という人間は必要ない。 たとえ俺の人生から、彼という光が消えたとしても、俺が死にはしないのと同じ。俺たちの運命は決して交わらない。
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