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熱いシャワーを浴びてようやく身体が目覚めて、のんびり朝食をとって、ほんの少し仮眠するはずが結構いい時間になっていた。のそのそとスーツに着替えながら、腕時計で時間を確認する。
同時に目に入る、右手の薬指。光るシルバーのシンプルな指輪を、そっと左手で撫でる。
「…お兄ぃは、今なにしてんの?」
「ん?ああ、もうすぐポスドクの面接」
「今の研究室で?」
「ああ」
「何それ、出来レースじゃん」
そう、バリバリの出来レースで、たぶん国内では最高峰の就職先でもある。博士課程を終了してポスドクから着実に進んで、ゴールは大学教授。学部生時代から散々見飽きてきた就職先に、もはや夢も希望もない。アラサー近い研究者に、象牙の塔以外の住処などないのだ。
それでも、高校で上京してからこっち、ずっと好きなように勉強させてくれてる親には感謝しかないし、地元で就職を選んでくれて、親の様子もこまめに見てくれてる出来た妹にはもはや頭が上がらない。
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