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イヤホンから流れてくるのはストリーミングのシャッフル再生。タイミング悪く失恋の歌とか、かけてくんなよ。泣きたくなるだろが。
ペラペラと意味もなく捲るページを目が上滑りしてるだけの無駄な時間。こういう無駄な時間の積み重ねがいずれ、彼を忘れさせてくれるんだろうか。
深い深い溜め息を吐いた左肩を、グッと掴まれた。
人の気配には気づかなかった。慌てて振り返るとそこには、
彼が立っていた。
は?
なんで。
今一番、逢いたくないのに。
思わず顔をしかめた俺を見て、彼の顔も歪んだ。
…そんな顔すんなら、なんでわざわざ。
片方だけイヤホンを外す。掴まれた肩をそれとなく外そうと身体をズラしたわずかな動きにも反応して、彼はするりと俺の腕を撫でるように手を滑らせて、俺の手首を握り直すと左隣りの椅子に腰をかけた。逃げ出せなくなる。
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