終着

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もう逢う気はないけれど。 うまく誤魔化せただろうか。無理矢理にでも笑えていただろうか。俺はちゃんと、このどうしようもない恋心を、終わらせてやれただろうか。 渾身の力を振り絞って背を向ける。ふらつく足を叱咤しながら一歩一歩踏みしめるように進む。あと少し、あと少しだけ頑張れ、我慢しろ俺の表情筋。 カフェテリアの出口にたどり着いて、すぐ横の細い道を進む。追いかけてくる足音は聞こえないから、もう大丈夫だろう。ぐるりと建物に沿って回り込み、角を曲がってようやく足を止めた。 次に逢った時はちゃんとオトモダチをやれるはずだ。来年はキャンパスも別々になるから、もう逢う機会もほぼないだろうけど、もし逢えたなら10年ぶりにトモダチの顔が出来るようにしておかなきゃ。 だから、もういいかな。もう、泣いても許されるかな。 壁とフェンスに囲まれた誰もいない裏口で、壁に背中を預けてズルズルとしゃがみこむ。俺、頑張ったよな。 思い返せば今までの10年、ひとりでよく抱え込んでたもんだ。あんな一瞬触れられただけで死ぬほど嬉しくなっちゃうバカみたいに一途な初恋を、ここまで育てられたことは後悔していない。彼を好きになってよかった。彼に恋をした俺は間違ってなんかなかった。だから、もう充分だよな。 この涙と一緒に、俺の中から流れ出して、消えてしまえ。 もう、初恋とはサヨナラだ。
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