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「…お兄ぃはさ、好きなように生きればえぇよ。こっちは、私に任せとき」
「…我が妹ながらホンマ、オットコまえやなぁ」
「殴るよ」
甲斐性のない兄を支えてくれる妹が恥ずかしくないよう、今日はいい兄を演じきるとしよう。
…結婚か。無意識のうちに、右手の薬指を触っていた。すりすりと親指の腹で撫でる、すっかり肌に馴染んだ感触は、そのまま俺が過ごしてきた時間の長さと重みを語っている。
自分で言うのも面映ゆいが、俺はかなりの高スペックだと思う。高身長、高学歴、収入はまだないが。運動神経はいい方だし、顔もまあそこそこだし、いわゆるクラスの人気者的な陽キャ筆頭である。
小学生の頃は女子の人気を欲しいままにしていた。でもその頃の俺は友達と遊んだり、習い事に忙しかったりで、淡い初恋なんてものには全然興味がなかった。キャーキャー言われるのは単純に嬉しかったけれど、それだけ。好きとか何とか、正直ピンとこなかった。
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