帰省

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転機が来たのは、忘れもしない小4の冬。 男女が分かれていわゆる性のお勉強をする、例の保健体育の授業の時だった。理系が得意だった俺は人体図鑑なんかとっくの昔に読み込んでいて、人体の不思議?そんなもん知ってるわ、というイヤな子供だったので、男女の肉体の違いだの性行為による妊娠出産だのは、ふーんって感じだった。お年頃だった同級生たちは、ヒソヒソとクスクスしていたけど、小学生男子なんてそんなもんだろう。 異性の肉体構造とか興味ないわ。気になる女子もいないし、子供をつくるとか想像できん。そう思って、男子だけの教室をぐるりと見渡してみる。それよりも、と偶然目に止まったのは、彼だった。 クラスで俺と人気を二分している彼は、ちっこくて色白でメガネで、女の子みたいに綺麗な男の子だった。物静かで、物知りで、いつも笑顔で優しい彼は、王子様というには物足りないけれど"女子の好きそうな男の子像"を体現していた。 そう、彼だ。彼なら、なら。 その時、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた。まさにコペルニクス的転回とはこのことだった。 俺は、彼を、押し倒したい、と思ったのではなく。 、押し倒されたい、と思ってしまったのだ。
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