試練

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「君が快感にバカみたいに弱いだけなんじゃない?全身性感帯なのか疑うレベルだよ」 なんて云いながらアレコレと好き放題するもんだから、初めのうちこそ必死こいて抗っていた俺も段々気が削がれていって、しまいにはどうにでもなれ!と半ば自暴自棄な状態に陥っていた。 だってありえないだろ、こんなガタイのいい男がありえない場所をありえない仕方で開発されてヒィヒィ善がり泣く、なんて黒歴史以外の何だっていうんだ。恥ずかしい。情けない。悔しい。みっともない。プライドなんかとっくの昔にズタズタで、それでも至近距離で見つめてくる彼の瞳が愛しげに細められる度にもう、何でもいいか、という気になってしまう。惚れた弱みってやつだろう、これは。 これは墓場まで持っていこうと思ってる内緒の話なんだが、初めて繋がった時は堪え切れずに泣いてしまった。十年越しの恋が形を得たことになのか、初めて俺を抱いてくれた人間が他でもない彼だったからなのか、理由なんか正直どうでもいいけどとにかく、涙が込み上げてきて止まらなかった。感動した、が一番近いかもしれない。 彼と恋人にならなければ、こんな風に誰かに愛されることも知らないまま生きていたかと思うと、何かグッとくるものがあった。愛する人とひとつに繋がることの感動、尊さ、みたいなもんが俺の胸をいっぱいにして溢れた結果だった。いまだに彼は揶揄うようにわざとその時の記憶を反芻する。とてもしあわせそうな顔をして、嬉しくて堪らないって笑みを浮かべて。だから俺はいつも、怒ることも拗ねることも出来ずに、仕方ねえなって笑うしかないんだ。
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