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「X753でお待ちの方、どうぞ」
自分の番号を呼ばれ、真波は腰を上げた。
「はい」
自分の声の固さに、自分で驚いた。どんなに大きな舞台でも、ここまで緊張することなんてなかったのに。知っている人がいなくてよかった。
案内されたのは、奥にある特別治療棟。入り口で、専用の防護服に着替える。その後、一番奥の治療室まで通されると、案内役の看護師がドアを開けた。
ドライアイスのような白い靄がふわりと流れ出る。中間室を通り抜け、病室に入ると、壁も床も天井も全て金属でできた部屋の中は、冷凍庫のように一面霜が降りていた。
「こちらに」
思わず足を止め、生唾を飲み込んだ。深呼吸をしてから、看護師が示すベッドの方へ歩みを進める。ベッドの上には、血の気の失せた顔で横たわる、かつての相方がいた。
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