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股間に蹴りを入れられて
痛む部分を両手で押さえる。
「使いモンにならんくなったらどうしてくれんねん?!」
「後でじっくり確認してあげる」
自分からセクシー発言をしておいて
照れ笑いを浮かべる実結は
どうしようもなく男心を刺激する。
神聖な気持ちになるのは無理。
笑いながら二回目のキスを交わした。
教会から徒歩数分のホテルで
ウェディングイベントをやっていて
実結がどうしても行きたいと言う。
「あんなぁ、実結? 今はまだ……」
「わかってるよ〜。でもね、タダでウェディングドレスを試着してプロカメラマンが写真撮ってくれるんだって。コスプレ写真だと思って付き合ってよ」
"タダ"という言葉に弱いのは悲しい性。
「それならええけど……」
軽い気持ちでOKした事を
すぐに後悔した。
有名デザイナーのウェディングドレスの
ファッションショーが終わると
ドレスを試着して撮影会。
男にはタキシードが用意されてるなんて
一言も聞いてなかった。
やられた……!
結婚というテンションのないまま
白いタキシードに身を包むと
自分がお笑い芸人みたいに感じる。
赤いバラでも咥えたろか……。
試着担当のお姉さんが
ベタなお世辞を言いながら
ズボンの裾を折り上げる。
「女性は簡単なヘアメイクも入るので、しばらくお待ち下さいね〜」
待合スペースで座ってると
他のカップルが行き交うのが見える。
幸せそうやな。
花嫁になる瞬間が一番美しいというのは
単に見た目だけの事じゃないのだろう。
皆キラキラと輝きを放っていた。
更衣室から実結が出て来る。
純白のウェディングドレス姿に
目を奪われた。
実結は可愛いと思ってたけど
心の底から美しいと思った。
「似合う?」と聞かれて
何の言葉も出て来ない。
初めて見た時よりも
神々しく光る実結を直視できない。
「き、綺麗やな……」
ようやく絞り出すと
実結はニコリと微笑んだ。
「紀樹もかっこいいよ。赤いバラが似合いそうだね(笑)」
「同じこと考えてたわ(笑)」
イベント用に用意されたティアラは
一千万円以上するらしい。
それでも無数のダイヤモンドより
実結の方が眩い。
最後にブーケを渡された。
ヨーロッパでは
愛する人の幸せを願って贈る
小さな白い花。
実結が一番好きな花。
花言葉は"幸福の再来"。
実結が生まれた季節には
庭いっぱいに咲く。
可愛い姿とは裏腹に毒があるとこも
実結にはピッタリやな(笑)。
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