1 Sな彼女とドSな彼

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「実結、愛してるよ」 「ずるいなぁ……」 愛の言葉を切り札代わりに使っても 俺の気持ちに嘘はない。 「ほんまやで?」 「紀樹はずるいよ……」 文句を言いながらでも バカ息子の相手をしてくれる実結が 追い詰められていることに 気付いてやることは出来なかった。 「紀樹、ドライブ行きたい」 「今から?!」 「うん。夜景が見たい」 「クッタクタなんやけど……」 「一生のお願い♡」 「実結の一生のお願いは何回あんねん(笑)」 遅い時間の屋外展望台には 二人の他には誰もいなかった。 星が降り注いだような夜景に しばらく無言で見惚れていた。 「綺麗だね……」 「そうやな」 実結のが綺麗だよ、と 照れずに言っておけば良かった。 うっすら涙を浮かべていたことには 途中で気が付いたけど 抱きついてキスをねだる実結は いつもより明るくはしゃいでいたから 気のせいだと思っていた。 テンションの高さは翌日も変わらず 紀樹が「また来ような」と言うと 実結は「来れたらいいね」と言った。 別れる前。 二人で行った最後の旅行は 幸せを感じた分だけ自分の愚かさを知って 思い出すと胸が痛む。
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