1 Sな彼女とドSな彼

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『実結、もう限界。今家の前にいるから少しだけ出て来て』 時刻は午後十時半。 サーヤの話を聞いてると 無性に実結に会いたくなった。 仕事をいくつか明日に回して 実結の家の方へと車で急いだ。 二階の部屋のカーテンが開く。 『すぐ行く』 現れた実結は薄いピンクのスウェットに グレーのパーカーを羽織っている。 抱きしめるとお風呂上がりの匂いがした。 色んな意味で限界。 「実結。ちょっとだけ相手してくれる?」 すぐさま反応した部分を押し付けると 実結は「もう」と言いながら笑う。 「車は?」 「コンビニの駐車場」 「しょうがないなぁ」 三日月の下を指を絡ませて歩く。 手の温もりは変わらなくて 何かが変わっているなんて 欠片も思わなかった。 実結のご奉仕が済んだ後 コンビニで買い物をした。 M×Mが置いてなくて マーメルチョコを買う。 実結は他にも何個かお菓子を買った。 「そんな食うの?」 「食べるわけないじゃん(笑)。会社の引き出しに置いとく分」 「そうやんな(笑)」 言いながら笑いが込み上げた。 「何がそんなにおかしいのよ」 お菓子だけにな♪ 「いや、アイツやったら全部食うんやろうなって思って(笑)」 「あいつ?」 「毎日ダイエットとか言いながらお菓子ばっか食い続けてるアホがおんねん(笑)」 「珍しいね。紀樹が女の子をあいつ呼ばわりするなんて……」 「そう? ほんまもんのアホやからな(笑)。新商品出るたびコンビニ店員に勧められる客なんか初めて見たで(笑)」 「そうなんだ」 しばらく会ってなかったし 電話もしていなかったから 聞いて欲しい話がいっぱいあって 俺は吐き出すように喋り続けながら 実結を家まで送った。 少しの時間でも会えて嬉しいと思う気持ちは 嘘でも何でもなくて ほんの僅かな充電時間にさえ 俺は身も心もあほみたいに満たされていた。
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