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「西川さーん、ランチ行きましょ♪」
来た。
昼イチからのサーヤ惚気。
俺に話してどうなんねん。
「おごらへんで?」
「わかってますよ。新しいお店の割引券もらったんで、そこ行きましょうよ」
しっかし、よう食うよなー……。
サヤカは大盛りサービスも迷わず注文して
どんぶりのご飯もペロリと平らげた。
「……何ていうか、将来を考えた時に私で亮太のプラスになるのかな?って考えてしまうんですよね」
こいつ最近まで結婚はもういいとか
言ってたんちゃうかったっけ?
「将来なんかふなっきーにプロポーズされてから考えたらええんちゃう? 今は今が楽しいやったらあかんの?」
何でみんな先を先を考えて
余計なことで頭を悩ませるんやろか。
「……西川さんは彼女と結婚は考えてないんですか?」
その地雷を踏まないように
実結から将来の話が出そうになると
話題をすりかえてきた。
時々強引に踏まされては
大怪我をしている。
致命傷になるわけないと
勝手に思い込んでいた。
「考えてなくはないけど、うちの会社の給料やっすいやん? 転職せな無理やろなぁ」
実結は結婚したらすぐ子供が欲しいと言う。
ついに先に子供が欲しいと言い出した。
子供を育てようと思ったら
どう考えてもお金が掛かる。
今は貯金すらない。
「彼女も私たちと同い年でしょ? そんなこと言ってたら彼女に愛想尽かされますますよ」
既に愛想尽かされていたことは
この時には知る由もなかった。
「結婚も転職もタイミングやからなぁ」
今の会社でしか出来ない仕事があって
どうしてもやってみたかった。
その経験を武器にして独立すれば
成功させる自信もあった。
仕事で成功さえすれば
実家にお金を入れながらでも
自分の家庭を築けるはずだと思っていた。
「西川さんは自分の出世と彼女とどっちが大事ですか?」
女はすぐ馬鹿げた質問をする。
男は好きな女を守るために
仕事を頑張るもんなんちゃうの?
「そんなん比べようがないやろ? せやし、一般のサラリーマンとふなっきーの仕事は違うやん。俺はよう知らんけど誰が上に立つかって大事なんやろな」
俺は彼女が死にかけてたら
仕事を放り出すことも出来るけど
ふなっきーは例え彼女が死にかけてたって
他に助けを求める人がいたら
そっちを優先して助けなあかんやろ。
背負ってるもんが違うねん。
誰が出世するかで世の中が変わる。
公務員ってそういうもんやろ。
「そうっすねぇ」
アライグマはデザートを食っている。
人が真面目に話してんのに……!
睨みつけると顔を上げた。
「ん? 西川さんも一口食べます?」
「いらんわ、あほ! 食い過ぎやねん!!」
サーヤを腹いっぱい食べさせていくには
ふなっきーもしっかり頑張らなあかんな(笑)。
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