1 Sな彼女とドSな彼

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「何で今日は指輪してないん?」 実結の左手の薬指を撫でる。 カフェに入った時に気付いた。 「ごめん。忘れちゃった」 実結が指輪を忘れて来るのは 別に初めての事ではなかった。 「ほな、今日は代わりにコレ着けてて」 指輪とお揃いの小さな誕生石の入った 四葉のクローバーのネックレス。 たまたま露店で見掛けた。 「へっ?! 何で……?」 「誕生日にはちょっと早いけどな」 四葉のクローバーが見つからなくて あまりにも落ち込んでるのを見て そこで急いで買ってきた。 「ありがとう……。貰っとくね」 「ちょうど良かったな。"CLOVER"の中には"LOVE"が入ってるんやって。店員に売り込まれたわ(笑)」 カフェで彼女が待ってるって言うてんのに 無駄にウンチクを語られた。 花言葉は『Be mine.』やって。 どうでもええわ。 「何乗せられてんのよ……(笑)」 細い首に四葉のクローバーを揺らしながら 実結はアイスティーを飲み終えた。 「さてっと。買い物でも行く? 何か見たいもんがあるんやったら……」 「ううん。ホテル行かない?」 「ええけど……。こんな明るい時間から大胆発言やな。こないだは最後まで出来んかったから夜まで待たれへんの?」 「……紀樹のバカ」 少し赤くなった顔にいつものように 照れ笑いを浮かべて視線を逸らすから 図星なんやと思ってた。 不意打ちのキスも 突然の誘惑も おかしいって今なら分かるのに。 実結の演技が上手かったのか 俺の目が節穴やったのか。 きっとその両方やな。
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