1 Sな彼女とドSな彼

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口を尖らせてむくれる実結の唇を 強引に奪うーーー つもりが 実結は指をいっぱいに広げて 紀樹の顔を押し返す。 「その手には乗らないんだから!」 「お前な〜……」 「ちゅーだけで機嫌取れるなんて思わないでよねっ!」 ちゅー"だけ"で機嫌取るつもりなんて 最初っからないんやけどな。 「ごめんて……」 「ドタキャン続きの後に寝坊して起きられないってどうなのよ?!」 待ち合わせ場所に現れない紀樹に 痺れを切らした実結は 自宅の前で一時間以上も待っていた。 「まだ昼前やんか」 「今日は埋め合わせしてくれるんじゃなかったの?」 「これからするって……」 実結の手を抑えてキスをする。 舌を入れようとすると 唇はギュッと閉じられて侵入を拒む。 「私は怒ってるんだから!」 「そうやな」 キスを諦めて首筋に吸い付く。 「きゃっ! やめっ……」 開かれた口を唇で塞いで舌をねじ込む。 「んん……っ!」 抵抗する力が弱まっていく。 抑えていた手を離して 実結の長い髪を撫でる。 「ほんまにやめて欲しい?」 実結は何も答えず まだ怒りの収まらない目を 潤ませていた。 そういう顔がたまらんって言ったら めっちゃ怒るんやろうな。
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