1 Sな彼女とドSな彼

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「実結はエッチすれば機嫌取れるけど、面倒臭いから服着たままで適当に済まそうとしたんじゃないの?!」 んなアホな。 「何でそうなんねん……」 「もういい。帰る」 「は? 何で……」 「紀樹は私の気持ちなんかどうでもいいんでしょ!」 「そんなわけないやろ」 細い肩に手を置くと 実結は少し俯いて呟くように言った。 「……結婚してよ」 一瞬自分の耳を疑ってしまう。 な、何やその逆転の発想?! 「今は無理やって前に言うたやろ」 「いつなら出来るの?!」 「今はわからん……」 「今は無理、今はわからんって、私はいつまで待ってればいいのよ!」 「それは……」 返答に困って黙っていたら テーブルの上の携帯が震え出す。 会社名が映し出された携帯は しばらくして動きを止めた。 「仕事なんでしょ? 私は帰るから大好きな会社に行けば?!」 「何やねん、その言い方……」 実結は再び鳴り出した携帯を取って 通話ボタンを押した。 「あっ、こら……」 "もしもし"と受話口から声が聞こえる。 実結は黙って携帯を差し出すと 荷物をまとめ始めた。 「すみません。今取り込み中なんで簡潔にお願い出来ます?」 ぶっきらぼうに言うと 会社の先輩からだった。 「昨日納品した先でエラー発生したって。至急来いってさ〜」 「うっわ、最悪……」 立ち上がった実結が大きく溜息をついて ドアノブを回す。 腕をつかんで「送る」と言うと 実結は首を振ってドアを開けた。 急いで着替えていると またまた携帯が震える。 「はい」 「お疲れ様です、山田です。西川さん、助けて下さい〜」 「自分で何とかせえ!」 電話を切ってベッドに腰を下ろした。 「好きで忙しくしてるわけちゃうんやけどな」 後ろに倒れ込む。 そろそろ何とかせなあかんよな。
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