1 Sな彼女とドSな彼

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実結の機嫌を直せないまま 迎えた月末。 俺はただでさえ忙しいSE業務の他に 事務作業に追われていた。 本来は社長の奥さんがやるべき仕事を 好意で手伝ってるうちに いつの間にか殆どをする羽目になった。 見兼ねた上司の神谷さんが 社長に新しい事務員を雇うように 交渉してくれていたが どケチ社長がなかなか動かない。 唯一の雇われ事務員の小野さんは 営業部の担当でフロアも違う。 俺のいるシステム部の事務を どうしても忙しい時だけ 仕方なく手伝ってくれている。 今月も溜まりに溜まっていた伝票を 処理して持ってきてくれた。 「小野さん、ありがとう」 「最近西川さんがシステム部の事務処理担当になってるような気がするんですけど」 「俺もそう思う(笑)」 奥さんは事務所にたまに顔を出すだけで 仕事する気はなさそうだった。 「西川さんがいない時、私がシステム部の事務処理やらされてるんですよね〜」 案件によっては直行直帰が続いて 何日も会社に来ない時もある。 「そうなんや。ごめんな」 「西川さんは悪くないですよ。人手が足りてないのが問題ですよね」 奥さんが仕事せえへんのが 一番の問題やけど。 「そうやなぁ」 「新しく雇う気あるんですかね?」 「ようやく求人出してくれるような話になってるみたいやけど、どうなんやろな?」 小野さんは苛立ちが顔に出るタイプで 忙しい月末はいつも不機嫌になる。 「後で社長に聞いてみます」 少し怒気を帯びた声で言う。 小野さんも実結も初めて会った時には 物腰の柔らかい子やなと思ってた。 女は怒らせたら怖いわ……。
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